研究実績の概要 |
本研究では、プロトンポンプ阻害薬(Proton Pump Inhibitors, PPI)や抗菌薬に焦点を当てて、これらの医薬品が関連した薬剤性腎障害の実態解明と、発症機序の探索を行うことを目的とした。2023年度は、プロトンポンプ阻害薬が関連する腎障害のリスク因子探索を目的に、薬物間相互作用を起こす可能性がある免疫チェックポイント阻害薬(Immune Checkpoint Inhibitors, ICI)の影響を検討した。 PPIの使用と急性腎障害(Acute Kidney Injury, AKI)のリスク上昇との関連が確認されている。しかし、PPI関連AKIのリスク因子は依然として不明であった。そこで本年度は、抗がん薬の1つであるICIが投与されたがん患者と投与されなかったがん患者において、PPI使用がAKI発症リスクに及ぼす影響を評価した。 複数の医療機関から寄せられた医療情報データベースを使用し、PPIまたはICIを新規に使用したがん患者38,930人を対象とした。ネステッドケースコントロール研究により、AKIのオッズ比(OR)を推定した。結果として、対象者のうち5,870例にAKIが確認された(発症率、21.9/100人年)。PPIを使用しておらずICIを使用したことがない場合と比較して、PPIを使用しICIを使用したことがない場合、PPIを使用しておらずICIを使用したことがある場合、PPIを使用しICIを使用したことがある場合のAKIのORは、それぞれ1.82(95%CI、1.67~2.00)、1.47(95%CI、1.17~1.86)、または2.13(95%CI、1.42~3.20)と推定された。以上から、PPIまたはICIの使用はAKI発症リスクの増加との関連することが確認された。一方、2つの薬物間の相互作用は検出されなかった。
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