研究課題
令和5年度における研究内容は (1)肺移植患者におけるタクロリムスの母集団薬物動態解析を実施および、(2)COVID-19治療薬であるニルマトレルビル/リトナビルとタクロリムスの相互作用について単一の症例から相互作用の予測を主として行い、以下の知見を得た。(1)肺移植患者におけるタクロリムスの母集団解析を行い、イトラコナゾール併用時の薬物相互作用について検討を行った。タクロリムスの薬物動態に影響を与える因子として術後日数、血清アルブミン値および投与経路が抽出された。また、イトラコナゾール併用のモデルとしては、イトラコナゾールの血中濃度を考慮したモデルがより相互作用を適切に評価でき、併用開始時にタクロリムスの投与量を60%程度減量することでイトラコナゾール開始翌日のタクロリムスの血中濃度を有効域に保てる確率が最も高いことを明らかとした。(2)ニルマトレルビル/リトナビルとタクロリムスを併用し、タクロリムスの血中濃度が異常高値を示した症例について、過去に報告されているタクロリムスの母集団薬物動態モデルを利用しニルマトレルビル/リトナビル併用時のタクロリムスのクリアランスおよびバイオアベイラビリティの変動を予測したところ、この薬剤の併用によりタクロリムスのクリアランスは約35%に減少、相対バイオアベイラビリティが18.7倍上昇すると算出され、この阻害効果は併用中止後も1週間程度持続することが示唆された。研究期間全体を通し、ファーマコメトリクスを利用した解析により、これまで報告の少なかった免疫抑制剤の薬物動態および相互作用について明らかとした。これらは、臓器移植患者における個別化投与設計に向けた有用な情報となると考える。
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Drug Metabolism and Pharmacokinetics
巻: 56 ページ: 101009~101009
10.1016/j.dmpk.2024.101009
巻: 53 ページ: 100529~100529
10.1016/j.dmpk.2023.100529