抗凝固療法は、直接経口抗凝固薬の上市にともない、ワルファリン中心の治療から選択肢が増えた。相互作用や遺伝的要因による影響を強く受け、モニタリングによる用量調節が必須であったワルファリンに比べ、直接経口抗凝固薬は、作用部位が単一で特異的であったことから、モニタリングの必要性も用量調節も必要なく安全に使用できるとされていた。しかし、臨床で使用されてから10年が経過するとともに、効果不十分と思われる症例や出血性イベントを起こす症例が見られるようになり、その使用方法を改めて評価する必要があると思われる。本研究では、適切な抗凝固療法の施行を目指し、直接経口抗凝固薬を理論的に解析し、有効性・安全性の指標となるような血中薬物濃度域を推定すること、また、血中薬物濃度は限られた施設でしか測定ができないため、視覚的に判断ができる評価法の開発を目的とする。令和4年度までに、血中第Xa因子阻害薬濃度の危険域を推定するため、抗Xa活性による評価を行った。PT-INRによってコントロールされたワルファリン投与群に対する第Xa因子阻害薬投与群の大出血発現率に関するオッズ比(OR)が、反復投与時の最高血漿中濃度より求めた抗Xa活性値と有意な相関が認められたため、ORが1となる抗Xa活性をカットオフ値として、これを越える血中第Xa因子阻害薬濃度を危険域と推定することができた。まず第Xa因子阻害薬に着目し、既報のプロトコルを参考に、第Xa因子添加量、必要血漿量、第Xa因子特異的基質の濃度、測定時間を検討した。吸光光度計を用いて評価し、一定の条件を決定することができた。実際に、疑似血漿を用いて第Xa因子阻害剤であるリバロキサバン、アピキサバンを様々な濃度に調製して測定したところ、検量線を作成できた。第IIa因子阻害薬については、さらなる検討が必要である。
|