研究課題/領域番号 |
21K06721
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
辻本 雅之 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (90372739)
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研究分担者 |
西口 工司 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (80379437)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロスバスタチン / 炭酸カルシウム / 酸化マグネシウム / 消化管吸収 |
研究実績の概要 |
本研究は、「金属カチオン製剤によるロスバスタチン濃度低下メカニズムの解明と関連医薬品への応用」と題されており、消化管上皮細胞における高リン血症治療薬を中心とする金属カチオン製剤とロスバスタチンとの相互作用について、そのメカニズムも含めて明らかにすることを目的としている。 本年度新たに明らかにした主な研究結果を以下に列挙する。① 炭酸カルシウムが、Caco-2細胞へのロスバスタチンの取り込みを有意に低下させること、② 酸化マグネシウムは、ロスバスタチンの取り込み量の低下だけでなく、ロスバスタチンのCaco-2細胞からの排泄遅延を引き起こすこと、③ 酸化マグネシウムによる排泄遅延は、BCRP基質であるSN-38においても認められること、④ 一方で、炭酸カルシウムは、ロスバスタチンの排泄速度にほとんど影響しないこと、⑤ 酸化マグネシウム及び炭酸カルシウムによるロスバスタチンの取り込み量低下は、細胞外pHを6.0から7.4に変更することで消失すること、⑥ 酸化マグネシウム及び炭酸カルシウムは、OATP2B1の調整薬であるバイカリンの影響をマスクすることが明らかとなった。また、他の高リン血症治療薬であるクエン酸第二鉄は、ロスバスタチン及びOATP2B1の基質であるDCFの取り込みを促進するという真逆の結果も得られており極めて興味深い。 以上の結果は、各種高リン血症治療薬のうち炭酸カルシウムは、OATP2B1のようなpH依存性のトランスポーターの機能抑制により、ロスバスタチンの消化管吸収を抑制し、クエン酸第二鉄は、OATP2B1のような取り込みトランスポーターを促進することにより、ロスバスタチンの消化管吸収を増大する可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績にも記載したとおりに、本研究において、金属製の各種リン血症治療薬は、ロスバスタチンの消化吸収に異なる影響を与える可能性を示した。本結果は、臨床現場にとっても重要な知見である。また、本研究は、そのメカニズムの一端にまで踏み込めており、少なくとも一部は、OATP2B1のようなpH依存性のトランスポーターの機能抑制に起因することを示唆している。このように、具体的なメカニズムにまで踏み込めており、大きな成果を得られていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
上述した通りに、クエン酸第二鉄と炭酸カルシウムは、ロスバスタチン取り込みに相反する影響を示す。これらのメカニズムの詳細を明らかにするため、複数の研究チームを作成し、よりスムーズに研究が実施できるように考えている。また、学外の薬剤師・研究者との情報共有・情報交換をより活発にするために、対面での学会や研修会へ、積極的に足を運びたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに研究を推進し、予算も使用したものの、10万円弱の予算が残っている。 残金については、2023年度予算に追加することで、価格が高騰している消耗品代としたいと考えている。
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