研究実績の概要 |
Vanin-1阻害を有する新規pantetheine誘導体を合成し(OMP化合物)、in vitroにおけるヒト血清に対するvanin-1酵素阻害活性試験に付した。今年度はOMP15~24を得た(検討①、②、③)。検討①では、ハロゲン系置換基(OMP-15,16,21,22)に着目した。ベンゼン環上のオルト位にフッ素が置換しているOMP-14,16が無置換のOMP-13,15より活性が低下した。酵素の活性部位、特にベンゼン環オルト位付近が空間的に柔軟ではないと推測した。フッ素特異的である可能性を確認するため、他のハロゲンとしてクロル基をメタ位に置換したOMP-21とオルト位に置換したOMP-22を合成した。同様に置換位置によって活性に差が生じたが、フッ素の場合とやや傾向が異なった。そのためフッ素特異性有無の断定は難しく、ハロゲンとしてブロモ基を置換したOMP化合物を合成し、フッ素-クロル基-ブロモ基の間で比較検討する必要があると考えられた。検討②では、Vanin-1のCys211残基に対するアプローチを行った(OMP-17,20,23,24)。Vanin-1の切断活性部位にCys211が存在することに着目し、vanin-1およびリード化合物であるRR6のX線結晶構造から、OMP化合物のCys211が最も接近する位置にケトン基があると推察した。ケトン基の位置に脱離基を導入したOMP-20,23を合成したが、いずれも阻害活性が見られなかった。検討③では、疎水性部位のスペーサー延長(OMP-18,19)について検討した。芳香環を導入したOMP-18、脂肪鎖を導入したOMP-19を合成し、OMP-18にRR6と同等な活性が見られた。ベンジル基の先のベンゼン環上で置換基の検討を行う事で、OMP-18をリード化合物とした新たな展開につながることが示唆された。
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