研究課題/領域番号 |
21K06723
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
倉本 展行 摂南大学, 薬学部, 教授 (60324092)
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研究分担者 |
宇野 恭介 摂南大学, 薬学部, 講師 (30608774)
金城 俊彦 摂南大学, 薬学部, 助教 (70758599)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カリウム / ミトコンドリア / 脱分極 / 興奮性毒性 / 神経変性 / ホメオスタシス |
研究実績の概要 |
マウス胎児大脳皮質由来初代培養神経細胞におけるKCC2発現をPCRで確認した。この細胞に対してKCC2開口薬または阻害薬を曝露したが、非曝露群と比較してMTT還元能は変化しなかった。一方、予期せず、阻害剤VU 0240551を前処置しておくと初代培養神経細胞にNMDA曝露によるミトコンドリア脱分極の程度が減弱し、NMDA曝露に伴う細胞死が、ある程度抑制された。またVU 0240551単独でもミトコンドリアが緩徐に脱分極したが、これはミトコンドリアKチャネル阻害剤で抑えられた。従って現段階では、KCC2阻害剤には神経保護作用があり、それはミトコンドリアがK+緩衝することで実現している可能性が示唆された。前年度までにすすめてきた簡易カリウムイオンセンサーを用いて、培養液や培養細胞の破砕液及び組織破砕液のK+濃度を簡易に測定し、比較検討する方法を当年度でほぼ確立した。この方法では、個々の細胞内のイオン濃度の定量は不可能で有ったが、薬物曝露有無などによるK+濃度の相対的な相違を定義することができることがわかった。この方法を用いて、K+濃度の異なる培地でインキュベートすると、濃度依存的に細胞内K+濃度が変化することが確認できた。一方で、K+チャネル開口薬による検討では細胞内K+濃度の減少が認められず、方法の調整を行っている。長期飼育(6月以上)マウスの脳内のSUR1及びKir6.2発現量の程度をイムノブロット法で比較すると、低分子SUR1が高齢マウスで増加する傾向が認められた。免疫染色法でも海馬領域で高齢マウス側にSUR1の高いシグナルが認められた。これについては現在は繰り返し実験により真偽を確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度もコロナ禍のため施設利用が困難な期間があり、研究推進に困難があった。特に人的資源の流動による遅れが大きい。すなわち、トレーニングされた学生が卒業したり、かわりの学生のトレーニングが遅れたりすることが致命的で有る。研究内容について、当初、KCC2開口薬が神経保護作用を示すことについて解析を進める予定であったが、開口薬では種々のアッセイ系で変化をみせず、一方で、阻害薬は、ミトコンドリア脱分極の程度を変化させる事実が確認できた。したがって、当初予定から予定変更を余技なくされた。昨年度から進めてきた細胞内カリウム濃度の定量方法について、簡易カリウムメータを用いた細胞内K+濃度測定条件の検討についてはほぼ確立できたが、研究時間がこれに割かれた。現在は、上記方向性の変更を踏まえつつ、培養細胞を用いたKCC2の阻害による興奮性毒性に対する(抑制)効果の解明に務めているが遅れている。したがって、in vivo投与実験に進めていない。
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき初代培養神経細胞またはKCC2を発現している株細胞を用いて、KCC2阻害薬による細胞内K+濃度の変化の実態を把握する。その上で、興奮性毒性をNMDA曝露によって引き起こさせた場合への影響を検討する。確立した簡易カリウムメータによる培養細胞内及び成体マウス脳組織内K+濃度の相対的変化を追跡する。老齢マウスと若年齢マウス間での比較、興奮性刺激を与えた動物での変化を検討する。KCC2やKATPチャネルサブユニットの培養細胞の細胞膜及びミトコンドリアでの発現、老齢マウスと若年齢マウス間での発現有無や変化を検討する。新規にKCaチャネルについて、その開口薬1-EBIO及び阻害薬アパミン曝露に伴う神経細胞生存への影響の検討を視野に入れて必要な準備を始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に研究費使用について執行したが、割引等の計算結果、当該額(7,347円)が繰り越しとなった。22年度までの研究計画は遅れ気味である。したがって、当初22年度内に行うはずだった研究について、23年度実施し、その費用として繰り越した額を用いる。23年度研究費については使用計画通り使用する。
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