研究実績の概要 |
急性リンパ性白血病の治療における主要な薬剤の1つであるL-アスパラギナーゼ(ASP)は、タンパク製剤であることから、投与した患者の生体内で抗ASP抗体が産生することで過敏症状の発生が問題になることがある。本研究では、患者血清中の抗ASP抗体価を測定及び抗体の細胞応答性を評価し、過敏症の発言との関連性を検討することで定量的な指標になるかを明らかにする事を目的とした。 日本小児がん研究グループに参加している9施設よりASP投与により過敏症状が発生した患者13例及び非発生患者22例を登録し、患者より提供された血液より血清を分離した。患者けっk成虫の抗ASP抗体としてIgGとIgEを高感度で定量する方法を電気化学発光法(ECL)で検討し、良好な測定感度の得られる方法を構築した。患者血清中の抗ASP IgG及びIgE抗体の測定を行い、過敏症の発生の有無による抗体価の差を検討した。ASP過敏症が発生した患者では、13例中11例でIgGまたはIgEが検出された。IgG及びIgEの抗体価はASP過敏症発生患者群において非発生患者群と比較して統計的有意に高値を示した(p = 0.03, 0.001)。 IgE抗体が検出された患者の血清を用いて、Fcε RI受容体を発現させた細胞を用いて、IgEの架橋に基づくマスト細胞の活性化による細胞応答性の評価を試みたが、IgEによる細胞応答性は確認されなかった。この結果より、ASPによる過敏症の発生にはIgG及びIgEが産生されることが要因であるが、細胞応答性はIgEの架橋ではない機序が考えられる。
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