研究課題/領域番号 |
21K06731
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
尾崎 紀之 金沢大学, 医学系, 教授 (40244371)
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研究分担者 |
奥田 洋明 金沢大学, 医学系, 准教授 (40453162)
堀 紀代美 金沢大学, 医学系, 助教 (40595443)
石川 達也 金沢大学, 医学系, 助教 (00750209)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 機能性胃腸症 / 胃の痛覚過敏 / ストレス / 肥満細胞 / インターロイキン / セロトニン / 粘膜上皮 / 連結複合体 |
研究実績の概要 |
ストレスがラットの胃の痛覚過敏を引き起こすメカニズムとして、サイトカインの関与を調べてきた。サイトカインの供給源と考えられる肥満細胞について、これまで、細胞数やインターロイキンの発現量を調べてきたが、優位な差を得られていない。また、胃粘膜における肥満細胞を含むセロトニン陽性細胞について調べてきたが、セロトニン陽性細胞の数についてもおおきな変化は見られていない。 これまで、上部消化管の痛覚過敏を引き起こす機能性胃腸症については詳細な報告はないものの、結腸において痛覚過敏を引き起こす、過敏性腸症候群のモデルでは、少数ではあるものの炎症性細胞の浸潤による結腸粘膜の微細な炎症がメカニズムとして重要との報告がされており、その微細な炎症には、結腸粘膜のバリアの障害が関わっていることが報告されている。そこで、ストレスによって胃の痛覚過敏が見られる水回避ストレスモデルにおいて、対照群とストレス群とで、胃粘膜のバリアに障害がないか、電子顕微鏡を用いた観察を進めている。ストレス群では、これまでの光学顕微鏡による検討では、明らかな炎症像や粘膜の障害などの大きな組織学的は変化は見られていない。しかし電顕レベルで観察できる、粘膜上皮細胞の形態の変化や、粘膜のバリアに大きな役割を果たしている粘膜上皮細胞どうしを連絡する連結複合体やそれを構成する閉鎖帯、接着帯、接着班、ギャップ結合について、超微細構造の形態や数に違いがないか、定性的定量的観察を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで、サイトカインの供給源と考えられる肥満細胞の数や、セロトニン陽性細胞数について、対照群とストレス群とで比較検討してきたが、細胞数のレベルでは有意な差が得られていない。胃炎や胃潰瘍と異なり、機能性胃腸症は胃粘膜の組織学的な形態が見られないのが特徴的な病態であり、水回避ストレスによる痛覚過敏モデルも、機能性胃腸症の病態を反映し、組織学レベルでの形態学的な異常はほとんど見い出せない。本モデルの病態解析には、これまでの検討より、より微細な変化をとらえる解析方法が必要な可能性があり、電子顕微鏡を用いた微細構造の解析に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
結腸の痛覚過敏を引き起こす過敏性腸症候群のモデルにおいて、結腸粘膜では、粘膜のバリアの障害によって、粘膜に微細な炎症がおき、その結果、結腸の痛覚過敏が引き起こされていることが報告されているので、胃の痛覚過敏に、胃の粘膜バリアの障害が関与していないか、電子顕微鏡を用いた粘膜上皮や粘膜上皮同士をつなぐ連結複合体の観察を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、免疫組織学的検討を進めていたが、有意差がとれないところがあり、免疫組織学的検討を一時的に中断して、電子顕微鏡解析を進めた。電子顕微鏡的解析で使用する包埋剤や試薬は、免疫組織学的検討に使用する抗体等の試薬より、価格が低かったので、次年度使用額が生じた。しかし、次年度は電子顕微鏡的解析とともに免疫組織学的検討を進める予定であり、また、論文投稿等で、英文校閲費や論文投稿のための経費がかかるため、次年度使用額と翌年度分として請求した助成金とを合わせて使用し、研究を進める予定である。
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