現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究内容の各項目に沿って記述する。 A: 核内脂肪滴の新規形成機序の解明。肝由来細胞での核内脂肪滴の原料となるリポプロテイン前駆体を持たないU2OS細胞(骨肉腫由来)において、本来は小胞体膜に局在する中性脂質合成経路酵素群(GPAT family, AGPAT family, Lipin family, DGAT1/2, アシル基転移酵素ACSL familyなど)が、内核膜にも局在することを、split-GFP技術を用いたBiFC (蛍光タンパク質再構成法)、蛍光免疫染色、免疫電顕などにより明らかにした。ライブイメージングでは内核膜から脂肪滴が直接形成されることが示された。TAGの前段階であるDAGをホスファチジン酸(PA)から合成する酵素Lipin familyのうち、Lipin-1 betaが核内脂肪滴形成に重要であった。PAは核内脂肪滴表面に一過性に集積離散を繰り返すことが判明した。小胞体膜貫通分子であり、小胞体での細胞質脂肪滴合成の足場機能をもつSeipinを発現抑制すると、Lipin1の転写亢進により核内脂肪滴が増加した。以上の新規知見は国際学術誌に発表した。 B: 脂肪滴-核内構造体の間の相互作用。DNA鎖間架橋の修復に関与するFANCタンパク質群の一部が、核内脂肪滴に局在していた。また細胞全体脂肪滴の形成阻害によりDNA損傷が亢進し、逆にSeipin発現抑制により核内脂肪滴形成を増加させるとDNA損傷が抑制された。 C: 脂肪滴脂質の液-液晶相転移と脂肪滴局在分子機能との連関。脂肪細胞分化モデル3T3-L1細胞において、分化誘導中にコレステロールを与えてCE形成を促進させると、脂肪滴の液晶化を示す偏光像が検出された。一方マクロファージ分化モデルTHP-1細胞はコレステロール投与法では偏光を持つ脂肪滴が得られず、貪食作用など別の刺激との併用が必要な可能性がある。
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