研究課題/領域番号 |
21K06735
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
森 徹自 鳥取大学, 医学部, 教授 (30285043)
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研究分担者 |
岡田 誠剛 倉敷芸術科学大学, 生命科学部, 教授 (40334677)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 成体ニューロン新生 / 脳室下帯 / グルタミン酸 / 軸索投射 / 帯状皮質 |
研究実績の概要 |
本研究では、皮質-線条体投射ニューロン (corticostriatum projection neuron, CStrPN)が、成体ニューロン新生に与える影響を検証することが目的である。マウスにおけるCStrPNは、胎生12-14日に産生され、主に大脳皮質第V層に存在し、線条体へ両側性に投射をするグルタミン酸作動性ニューロンである。大脳皮質の中でも帯状皮質のCStrPNは、成体ニューロン新生の場のひとつである脳室下帯(subventricular zone, SVZ)内に投射をしていることを、予備実験から明らかにしている。現在までに、成体ニューロン新生は様々な神経伝達物質の影響を受けていることが知られているが、グルタミン酸の影響については不明な点が多い。本年度は、胎生期から生後における帯状皮質CStrPNのSVZへの軸索投射について、詳細な検討を行った。蛍光タンパク質発現プラスミドを、子宮内電気穿孔法で帯状皮質CStrPNへ導入した後、経時的に軸索投射の様子を観察した。帯状皮質よりも外側の大脳皮質CStrPN軸索は、反対側の線条体に生後3-4日に侵入する事が知られるが、帯状皮質CStrPN軸索は、生後0日前後で既に侵入していた。また、CStrPNは胎生13日で産生数が頂点に達するが、胎生13日と14日で産生された帯状皮質CStrPN軸索伸長については、正中部の通過、および反対側線条体への侵入共に、ほぼ同時であった。また、生後マウスにおける帯状皮質CStrPN軸索は、線条体侵入直後には、線条体内で広い範囲に投射を行っていたが、マウスの成長と共に線条体内側のSVZ直近に投射範囲が収束することが分かった。生体ニューロン新生領域であるSVZは、生後3週でその構造が完成するとされている。今年度得られた結果から、帯状皮質CStrPNが、SVZの形成・成熟に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
帯状皮質CStrPN軸索が、SVZへの投射する発生学的知見はこれまで報告が無く、本研究課題の基本的なデータとなる。本年度は、この解剖学的な知見を得ることを当初から予定しており、概ね順調に進行していると言える。しかし、CStrPNの産生ピークが胎生13日であるが、胎生13日に子宮内電気穿孔法で導入しても、ほぼすべての新生仔は誕生翌日には死んでしまった。このため、胎生13日に産生されたCStrPNを蛍光タンパク質で標識する実験に、非常に多くの時間を割く結果となり、予定より遅れてしまった。また、新型コロナウイルスの影響で、特に外国から輸入する試薬の納品等に時間がかかることがあった。
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今後の研究の推進方策 |
帯状皮質CStrPNの軸索投射に関して、基本的な発生学的知見を得ることができた。胎生14日に産生されたCStrPNでも、胎生13日に産生されたCStrPNと、時間的・空間的にほぼ同一の軸索投射パターンを示すことが分かったので、当初の研究計画で予定されていた子宮内電気穿孔法による遺伝子導入の実験は、胎生14日に変更する。他の実験に関しては、当初の研究計画に沿って実施予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗が、予想より若干遅れたため。子宮内電気穿孔法による遺伝子発現実験で、条件設定に時間がかかり、専ら子宮内電子穿孔法の実験を行った。そのため、他の実験を実施する余裕が無くなり、試薬等を購入することが無かったため、次年度使用額が生じた。
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