ヒト大腸癌病理組織におけるプロサポシンおよびそのレセプターであるGPR37、GPR37L1と癌の悪性度との関連を調べるため、悪性度の高い症例を中心に大腸癌病理組織パラフィンブロックから数百枚の切片を作成し、各部位においてそれぞれプロサポシン、GPR37、GPR37L1についてDAB染色を行った。また腫瘍随伴マクロファージ(TAMs)を検出するためマクロファージマーカーであるCD204、CD163でもDAB染色を行った。一部の症例についてはTAMsがプロサポシンを分泌していることを証明するために、プロサポシンとCD204で蛍光組織化学染色を行った。また他の癌との比較のため胃癌、乳癌、子宮頚癌、肺癌などの組織についても染色を行った。 全症例の画像解析を行うとともに陽性細胞数を一定の基準で計測し一覧表を作成した。事前実験から症例数を増やして検討したが、事前実験で見られた癌悪性度とプロサポシンの分泌量との間に明らかな相関関係は認められなかった。これは癌による非特異的な炎症反応のために増加したプロサポシンを検出してしまっている可能性があった。そこで腫瘍随伴マクロファージのM1型(炎症性)、M2型(抗腫瘍型)に着目し、抗腫瘍型であるM2型マクロファージのみで悪性度との関連の検討を進めている。 上記実験に並行してマクロファージ培養細胞株を使用した実験を行った。プロサポシンと蛍光蛋白質融合遺伝子を組み込んだ大腸菌をクローニングし、培養細胞に遺伝子導入することでプロサポシン蛍光融合蛋白質を過剰発現する系を作成した。またヒト大腸癌培養細胞株SW480においてプロサポシンレセプターGPR37の発現上昇を確認した。この系を用いることで、プロサポシンを使用した癌進展実験及び抑制実験を行うことができた。
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