研究課題/領域番号 |
21K06738
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
菱川 善隆 宮崎大学, 医学部, 教授 (60304276)
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研究分担者 |
チョウジョウフ ナランツオツク 宮崎大学, 医学部, 准教授 (90640962)
矢野 公一 宮崎大学, 医学部, 助教 (30627344) [辞退]
池ノ上 実 宮崎大学, 医学部, 助教 (40612370)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肝再生 / 脂肪肝 / 細胞増殖活性 / エストロゲン / 脂質代謝 / CD36 |
研究実績の概要 |
脂肪肝は肝細胞障害と脂肪変性を主体とし、特に女性では閉経後に多く発症することからエストロゲンの関与が示唆されている。我々は、正常ラット70%肝切除モデル(PHX)肝再生過程で、エストロゲンが肝細胞増殖早期化と脂質代謝を亢進させることを見出した。この誘因としてエストロゲンによるミトコンドリア代謝活性促進の関与が考えられるが、障害肝での肝再生誘導との関連性については不明である。このため、コリン欠乏超高脂肪食飼料(MCD)を与えた非アルコール性脂肪肝炎(NASH)マウスを作製し、30%PHX、50%PHX、ならびに70%PHXを行い、24h~7日後の再生肝について、生存率、Oil Redによる脂肪沈着の動態、並びにPCNAを指標とした肝細胞増殖活性動態を検討した。その結果、MCDマウスで、30%、50%、70%肝切除を行ったところ、70%PHXではPHX72hで生存率が50%となり、NASHマウスでの肝切除は50%で行うこととした。脂肪沈着の肝切除後の変化については72hで肝細胞内に脂肪滴が高度にみられた。一方で、PCNAを指標とした肝細胞増殖活性はPHX36h後でピークを迎え、正常マウスでの肝細胞増殖活性のピークである48hよりも早期化がみとめられ、肝細胞での再生能の活性化に脂質代謝系が関与する可能性が示唆された。ミトコンドリア膜ステロール調節エレメント結合蛋白質-1 (SREBP-1)発現については、肝切除による発現動態に違いは認めなかったが、細胞膜糖タンパク質であるCD36がMCDマウスのPHX12hで高発現を認め、肝再生過程での脂質代謝に膜糖タンパク質の制御機構の関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コリン欠乏超高脂肪食飼料を与えた非アルコール性脂肪肝炎(NASH)マウスを作製し、30%PHX、50%PHX、ならびに70%PHXの手技並びに切除範囲の至適化を行った。ミトコンドリア関連タンパクSREBP-1並びに膜タンパク質CD36の肝再生過程での発現動態の違いを明確化し、肝再生の早期の脂質代謝にはCD36を介する非受容体型チロシンキナーゼや他の膜受容体との相互作用の可能性が示唆され、新たな制御機構の存在の可能性が示唆されたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、コリン欠乏超高脂肪食飼料を与えた非アルコール性脂肪肝炎(NASH)マウスに卵巣摘出とエストロゲン処理したPHX肝再生組織で、細胞増殖活性と脂質代謝活性指標のミトコンドリア膜ステロール調節エレメント結合蛋白質-1 (SREBP-1)発現とミトコンドリア形態変化ならびにCD36の細胞内脂質代謝経路への関与、マイクロアレイ解析による一連の遺伝子発現解析を行う。
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