研究課題/領域番号 |
21K06740
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
木村 英二 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (50405750)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 血管形成 / ゼブラフィッシュ / 脳血管 / ゲノム編集 / CRISPR/Cas9 / 神経発生 |
研究実績の概要 |
本研究では、小型魚類のゼブラフィッシュを材料とし、脳血管系の形成過程における神経発生の関与、血管形成と神経発生のクロストークを解明する。そのために神経発生過程における遺伝子の発現パターンを脳血管系の形成過程と照らし合わせることで関連を想起する発現パターンを示した遺伝子群を選定した。これらの標的遺伝子群をCRISPR/Cas9法でノックアウトし、脳血管系の形態形成への影響を評価する。また魚類では進化の早い段階でゲノムの倍化が生じており、パラログ遺伝子により機能が補完されている可能性がある。パラログ遺伝子を同時にノックアウトすることで確実に表現型を示す系統を作成し解析する。2021年度には、対象遺伝子を再確認し、それら全てのsgRNAを合成し、受精卵へ一通りインジェクションしゲノム活性評価を実施するところまで進捗した。しかしながら約半数ではゲノム編集活性を確認することができたが、残り半数では十分な活性を認められなかった。また表現型に観察では、F0世代で、発生に重篤な影響を示すものを複数確認できたが、明確な血管パターンの変異のみを示すものは得られなかった。そのためF1世代以降で表現型の確認を行う必要があり、現在ゲノム編集活性を認めた遺伝子に関しては、F0世代を飼育している。今後F0世代が交配可能になった段階でF1世代のゲノムを確認し、potential F0を同定し、遺伝子破壊体系統を樹立し表現型の観察を行う。またゲノム編集活性が認められなかった遺伝子群に対しては、sgRNAの再設計を含めた再合成を行い、2022年度に再度イジェクションを行って変異体系統の樹立を目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度には、まずゼブラフィッシュのデータベースを用いて対象遺伝子の再確認を行い、計31遺伝子を対象として選定した(脳動脈床の領域 5遺伝子、脳静脈床の領域 2遺伝子、視床下部・下垂体領域10遺伝子、眼の血管形成領域 6遺伝子、頭頂部領域 4遺伝子)。そしてこれらの対象遺伝子の破壊実験のために使用するsgRNAの設計を行った。併せてsgRNAのゲノム編集活性能を評価するHMA法で使用するcheck primerも各sgRNAに対して設計し発注した。こののち、sgRNA用primerをそれぞれpDR274にクローニングし、組み込まれた配列をシークエンサーで確認した。配列が正しく確認できたplasmidは制限酵素処理することで1本化し、sgRNAを合成した。これらのsgRNAを、血管系で特異的に蛍光を発する遺伝子組み換え体の受精卵に対してインジェクションを行い、HMA法によりゲノム編集活性を評価すると同時に、表現型の有無をF0世代で確認した。その結果、約半数でゲノム編集活性を確認できたが、残りの半数では十分な編集活性は認められなかった。これらの傾向として年度後半にインジェクションしたものほどゲノム編集活性能が低い傾向があることから、gRNAの合成してからの保存に問題がある可能性が考えられた。またインジェクションしたF0世代で、個体発生に重篤な影響を示すものは複数確認できたが、明確な血管パターンの変異のみを示すものは得られなかった。そのため表現型の評価をF1世代で行うべく、現在 編集活性を認めた遺伝子に関してはF0世代を飼育中であり、今後交配可能になった段階でF1世代でのゲノム変異を確認し、変異体系統の樹立を目指していく。
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今後の研究の推進方策 |
まずゲノム編集活性が確認できた遺伝子群に関しては、インジェクションした胚を現在飼育中であり、F1世代を得られた段階でpotential F0を同定するとともに、フレームシフトを生じる変異パターンを同定して遺伝子破壊体の樹立を目指していく。多くの対象遺伝子は、パラログ遺伝子も含めた複数遺伝子での同時破壊体を目指しており、複数の遺伝子破壊が揃わないと表現型の確認はできないため表現型の確認までには時間を要する。そこで進行状況に応じて、遺伝子ごとに優先順位を設定して、モルフォリノアンチセンスオリゴ(MO)による遺伝子抑制実験も並行して進めていく。しかしながらMOは一遺伝子あたり7万ほど経費がかかるため慎重にその対象遺伝子は選定する。またゲノム編集活性を認めなかった遺伝子群に対しては、sgRNAの再合成を行うとともに、再設計したものも併せて準備していく。再設計したもの関しては、研究期間の制限もあることから、IDT社からready madeの合成されたsgRNAを購入して使用する。これらをインジェクションし、ゲノム編集能の評価、表現型の確認を行い、遺伝子破壊体の樹立を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
冬場に卵の産みが悪くなり、対象遺伝子群のインジェクションを一通り終了するのが年度末いっぱいまでかかってしまった。そのためにゲノム編集活性が低かった遺伝子に対する再設計・再合成を2021年度内に行うことが出来なかった。これらの当てるべき費用分が2021年度中に使用することが出来なかったため、次年度使用額が生じた。しかしながら2022年度には、これらの遺伝子群に対するsgRNAの再設計・合成sgRNAの購入を速やかに行い、繰り越した予算を執行する。
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