研究実績の概要 |
妊娠動物5例から計14例の仔を得た。このうち7例は6、7日齢(脳溝形成初期)に500 μg/g 体重のリポポリサッカリド(LPS; 4型Toll様受容体リガン卜)を1回ずつ(計2回)皮下投与した。残りの7例は対照とした。全ての動物において5日齢に新生する細胞をEdUで、7日齢に新生する細胞をBrdUで標識した。 LPS投与直後の7日齢に各群3例の仔動物を、脳溝形成が完了する20日齢に各群4例の仔動物を灌流固定した。7日齢の仔の脳は組織切片とし、切片上でEdUとBrdUの標識、および細胞増殖マーカー(PCNA, Ki67, PH3)、神経幹細胞/神経前駆細胞マーカー(Pax6, Tbr2, Olig2)、未成熟ニューロンマーカー(Cux1, Ctip2)に対する抗体を用いて免疫染色を行った。LPS投与群では大脳皮質の脳室下帯内層(iSVZ)においてBrdU標識細胞の密度が有意に高かった。BrdU標識細胞の88%以上はPax6陽性であったため、LPSによりiSVZにおいてbRG (basal radial glia;神経幹細胞)およびIPs(intermediate progenitors;神経前駆細胞)の増殖促進が示唆された。LPS投与群では対照群に比べてBrdU標識細胞のPCNA陽性率とTbr2陽性率が有意に低く、Ctip2陽性率は逆に有意に高く、LPSによりIPsからの皮質ニューロンへの分化が促されることが示唆された。 20日齢の仔の脳は固定後にMRI計測し、脳溝形成の定量評価を行った。LPS投与群では、大脳皮質の容積や表面積に有意な変化がみられなかったものの、前頭領域と頭頂領域の脳溝形成頻度が対照群に比べて低く、とくに前頭溝、外側溝、シルビウス上溝吻側部などこれらの領域を横断する脳溝の尾側部の形成が甘くなっていた。
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