研究課題/領域番号 |
21K06744
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
渡部 功一 久留米大学, 医学部, 教授 (40309852)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 顔面軟部組織 / 線維構造 / retaining ligament / SMAS |
研究実績の概要 |
顔面軟部組織を我々が開発した方法を用いて肉眼解剖学的に観察を行った。その方法とは、顔面軟部組織を採取後、幅7mmで切片を作成し、それらの切片をエオジンにて染色後、ラバーボードに固定した上で皮膚を垂直方向に牽引して軟部組織を機械的に拡張させる。その後実体顕微鏡下で線維の損傷を避けながら脂肪を除去する。幾何的に拡張され、脂肪を除去された軟部組織は厚みが約5倍程度となり筋、神経、血管などの3次元的位置関係が容易に判別可能となる。また、疎性結合組織が拡大されるため組織の接着状態も明瞭化される。また、筋と真皮など個々の組織を連結する結合組織の状態も明瞭化される。 本法を水平断5例、前頭断(外側)~矢状断(内側)5例に対して施行した。 顔面の浅層筋膜であるSMASを構成する個々の構造物(耳下腺筋膜、浅側頭筋膜、広頚筋、前頭筋、眼輪筋など)は、皮膚側から観察すると同一平面上に存在するものの、必ずしも連続している訳ではないこと、SMASに連続する筋膜がSMAS層ではなく深層方向に優位に連続する部位などを観察することが出来た。これらの所見は通常の肉眼解剖学的解剖方法や顕微鏡切片による観察では確認不可能であり、本法によって明確化することが可能になった所見であると考える。本結果については今後、学会発表および論文による報告を行う予定である。 顔面浅層と深部の組織を連結するリガメントについても本法で観察を行った。特にtrue ligamentと呼ばれる骨膜から真皮に向かうリガメントについては、骨膜からのびる靭帯様のリガメントの周辺に比較的疎で伸展性のある結合組織が取り巻いた形状をしており、この所見はこれまでのリガメントの概念を変え、新たな治療法の元となる所見であると考える。これについても今後、学会発表および論文による報告を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は顔面線維構造の肉眼解剖学的解析を予定していた。水平断および前頭断~矢状断による切片で新たな所見も得られ、ほぼ予定どおりの進行であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度については、現在行っている肉眼解剖を追加した上で組織切片による解析を追加していきたいと考えている。 これは、SMASおよびリガメントの新しい所見の解析を更に進めていくためである。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行はおおむね順調であるが、硬性小物(マイクロ攝子など)の購入予定であったが当初研究室の備品を使用していたために予算の余りが生じた。次年度にも肉眼解剖学的解析を進めていく予定であり、それに対しての経費および組織切片のための各種消耗品(スライドグラスなど)に使用する予定である。
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