研究実績の概要 |
細胞内の分子や細胞小器官の多くは、エネルギー消費を伴う細胞内物質輸送機構によって、細胞内での局在が制御されている。輸送を駆動する多様な分子モーターについては、その運動特性や制御機構が古くから研究されてきたが、多くの分子モーターは、細胞内においてin vitroの数倍「速く」運動することが知られており、この違いをもたらす分子機構は分かっていない。本課題では魚類と両生類の黒色素胞細胞(melanophore, melanocyte)におけるメラノソーム輸送速度の違いに着目し、分子モーターがなぜ細胞内で「速い」のかという分子モーター特性の一端の解明を目指す。初年度は微小管系分子モーターの制御因子から構成される複合体RMU(regulated motor unit)の機能解析のため、これらの発現系を立ち上げた。過剰発現に加え、ゲノム編集とレンチウイルス感染系を用いた遺伝子導入が進行している。また、近年、細胞内の分子混雑状況が、分子反応速度や細胞内部の物理的特性の一部を制御することが分かってきた。本課題では、分子混雑状況がカーゴの輸送速度に与える影響を検証するため、分子混雑状況をモニターするGimRETセンサーを導入し、大きさの異なる複合分子GEMs(genetically encoded multimeric nanoparticles)を哺乳類培養細胞に発現させた。本年度は輸送速度解析に先立ち、GEMsの細胞内拡散の挙動をいくつかの条件下において比較した。またCID法(、chemically induced dimerization)を用いキネシンに輸送させる実験系を立ち上げている。
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