胞内の分子や小胞、細胞小器官の多くは、細胞内物質輸送機構によって細胞内での局在が制御されている。輸送を駆動する蛋白質である分子モーターについては、その運動特性やそれに伴う分子の構造変化が多く研究されてきたが、細胞内において、多くの分子モーターがin vitro再構築系より高速に運動する理由はまだよく分かっていない。本年度は、主に、細胞内において細胞内輸送制御を受ける様々な細胞内小器官と小胞をラベルするための蛍光蛋白質プローブの応用を進めた。長時間、高解像度で細胞内物質輸送を追跡するためには、高輝度で、かつ退色に強い蛍光蛋白質の利用が求められるが、理研宮脇研究室と当研究室で応用開発を進めているStayGoldの単量体変異型を、様々な局在化タグと融合させた蛍光プローブを構築し、それらの有用性を確認した。STED超解像顕微鏡による観察では、長時間の励起光及びSTED光に高い耐性を持ち、生きた細胞における標的分子の長時間の高解像度観察が可能であることが示された。Cas9やその他手法による遺伝子導入効率の向上については、引き続きゲノム内の特定配列へのラベル手法の開発と並行して進め、これによりStayGold蛍光蛋白質を融合させたプローブ分子を安定発現する培養細胞を複数樹立しており、今後の研究において活用する。また東京大学牧野司博士との共同研究では、キネシン分子モーターの一種であるKIF6のマンシェット輸送における機構の理解についても一定の進捗があった。
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