胎児期において、主に迷走神経堤に由来する前駆細胞から腸管の壁内全体に神経叢が形成されるが、先天的に腸管遠位部側に形成不全が生じる疾患が知られている。我々は以前に腸管に投射する外来神経線維に由来するDhh陽性のシュワン細胞系譜の細胞からも腸管ニューロンが生後生じることを見出し、さらに疾患のモデルマウスにおいて、神経叢の形成不良が生じている領域において不足したニューロンを補うようにDhh陽性細胞からのニューロン産生が高まることを明らかにした。ニューロン産生能を有する細胞が外来線維上にどのように分布しているのかについて解析を進めているが、まだ同定には至っていない。一方で細胞増殖状態に入っているDhh陽性細胞について解析を行ったところ、生後一ヶ月齢のマウスにおいて多くの神経線維上の細胞は増殖状態にある細胞はほとんど見られないのに対し、骨盤神経叢から直腸・結腸に伸びる神経線維上では、増殖状態の細胞が多数確認された。そこで骨盤神経叢におけるDhh陽性細胞運命解析を行ったところ、胎児期に形成される骨盤神経節の領域では、グリア細胞のみがDhh陽性細胞由来であったのに対して、膀胱基底部など周辺臓器近くではニューロンになっていることを見出した。骨盤神経叢がューロン産生能を有するSCP系譜の細胞ソースの場になっていると考えられ、骨盤内臓器が生後に発達して排泄、泌尿、生殖機能を高めていくことに関連しているのではないかと予想される。
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