研究課題/領域番号 |
21K06756
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
渡邉 裕二 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (80301042)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 発生 / 神経分化 / 回路形成 / 細胞移動 / 視蓋 / 鳥類 |
研究実績の概要 |
ヒトは膝状体系と膝状体外系の2つの視覚経路を持ち、その基本構造はヒトを含む哺乳類と鳥類の間て共通している。我々は鳥類の膝状体外系を構成する視蓋-円形核投射ニューロンに着目して研究を進めた。鳥類の視蓋は15層から成る発達した層構造を持ち、脳室層て生まれた細胞の放射状方向への移動と、その後の接線方向への細胞移動によって層が構築される。我々は視蓋の深層と浅層の両方て接線方向への細胞移動の動態を明らかにし、それらが視蓋全体への拡散を経て層形成に関与することを示してきた。深層を移動する細胞は視蓋全域に起源を持ち、第14層を走る軸索束を足場として背側・腹側方向に接線移動した後に、第13層に上方移行して多極性ニューロンに分化する。我々は接線方向移動後の多極性ニューロンの発生過程を追跡した結果、第13層での局在や樹状突起が広範囲に分枝する細胞形態が視蓋-円形核投射ニューロンに酷似することから、多極性ニューロンが視蓋-円形核投射ニューロンに分化することを見出した。これを検証するため、まずニワトリ胚視蓋へのpCAGGS-mCherryのエレクトロポレーションにより、視蓋深層の多極性ニューロンを赤色蛍光標識した。次に網膜から蛍光標識ウィルスべクター(VSV-Venus)を感染させて、膝状体外系視覚経路を経シナプス順行性標識して視蓋-円形核投射ニューロンを緑色蛍光標識した。二重標識により多極性ニューロンの視蓋-円形核投射ニューロンへの分化を検証したところ、接線方向移動の後に神経分化した多極性ニューロン(赤色蛍光)のうち、膝状体外系視覚経路を構成する視蓋-円形核投射ニューロンに成熟するもの(赤色緑色二重蛍光)が多数存在した。このことから視蓋-円形核投射ニューロンは接線方向移動により視蓋全体に拡散し、網膜から直接シナプス結合して膝状体外系を形成する重要な役割を担っていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光標識ウィルスべクター(VSV-Venus)の精製および感染を施行して、膝状体外系視覚経路を経シナプス順行性標識することができた。また細胞移動から神経分化の細胞動態をライブイメージングで記録することができた。
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今後の研究の推進方策 |
視蓋-円形核投射の形成について、その発生由来から細胞移動、神経分化を経て投射ニューロンして分化するまでの過程を追跡し、移動や分化に関連する分子の働きについて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
長鎖遺伝子のクローニングに時間がかかり、一部の実験が予定より遅れてたため物品費が予定額を下回った。 また出席予定していた学会がオンライン開催化したため、旅費の使用が無かった。 次年度以降は計画どおりに実験を進め、予定通りに学会に出席する計画である。
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