研究課題
前年度までの結果から、真皮マクロファージ内のSNX25が転写因子Nrf2のユビキチン化を阻害することでNrf2によるNGFmRNAの産生、それに引き続くNGF蛋白の産生分泌が痛覚閾値を低く保つことが明らかとなった。今年度はそれをさらに生理学的にも証明するために、ニューロメーター(神経伝導速度測定装置)による検査を導入(大阪工業大学 芦高研究室との共同研究)し、CX3CR1依存的なSnx25コンディショナルKOマウスにおいて末梢神経の伝導速度を測定した。5Hz(C型線維)、250Hz(Aδ型線維)、2000Hz(Aβ線維)の3種類の刺激で見たところ、5Hzの刺激で有意に伝導速度が遅くなった。このことはSnx25ノックアウトによるNGF低下がC型線維特にC型低閾値機械刺激感受性神経に影響を及ぼしていることが明らかとなった。またSnx25のコンディショナルKOにおいてはvon Freyテストより細いフィラメントを用いたTactileテスト(触覚テスト)によってやはり触覚刺激に対して鈍感であることも明らかとなった。上記のニューロメーターの結果と合わせて、Snx25は触覚から痛覚まで連続的な感覚センシングを制御していることが示唆された。さらにこれらの真皮層での結果を受けて、下行結腸も後根神経節由来の神経線維による感覚支配を受けていることから、内蔵痛にもSnx25-Nrf2-NGFシグナルが関与しているのではないかと考え、コンディショナルKOマウスと対照マウスでZymosan浣腸による大腸炎モデルを作成し、これらマウスに肛門からバルーンを挿入し、膨らませた際の痛覚を外腹斜筋の収縮筋電図で検出した(内臓ー腹筋反射〕。コンディショナルKOでは有意に内蔵痛が抑制されたので現在これをさらに詳細に検討中である。
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