研究課題/領域番号 |
21K06763
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
大江 総一 関西医科大学, 医学部, 助教 (70599331)
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研究分担者 |
和田 幸恵 (平原幸恵) 関西医科大学, 医学部, 講師 (70457969)
林 真一 関西医科大学, 医学部, 講師 (80599572)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脳梗塞 / 胆汁酸 / CYP7A1 / 転写後発現制御 / ニューロステロイド |
研究実績の概要 |
本研究課題は、正常脳実質に存在する胆汁酸を「脳由来胆汁酸」と捉えその合成メカニズム、生理機能、病態との関わりを明らかにする事により新規脳梗塞治療法確立を目指している。令和3年度は胆汁酸合成律速酵素であるCyp7a1を欠損するマウスの作製をおこなった。CRISPRCas9システムによりCyp7a1遺伝子座(約7000bps)を欠損させるためにCyp7a1遺伝子exon1およびexon6の近傍に相互作用するCRISPR RNAを各4種類設計した(UP1-4、DW1-4)。その後、iGONAD法を用いてマウス受精卵に遺伝子導入し、ゲノムPCRによりゲノム編集の有無を確認した。その結果、UP4/DW3のCRISPR RNAセットにより片アレルでのCyp7a1遺伝子座欠損を確認し、Cyp7a1ヘテロKOマウスを得た。Cyp7a1ヘテロKOマウス(F0)の交配によりF1世代を獲得しさらに交配を進めることで現在F3世代を得ている。F2世代においてCyp7a1ホモKOマウスを得たため、8週齢オス個体をもちいて還流固定、急性凍結切片作製、免疫組織染色、ウエスタンブロットをおこなった。これまでの実験結果から、野生型マウスの肝臓および脳におけるCYP7A1発現を確認しているが、Cyp7a1ホモKOマウスでは肝臓/脳で発現しないことを確認した。さらに、質量顕微鏡法を用いてCyp7a1ホモKOマウス脳切片におけるタウロコール酸の検出をおこなった。野生型マウス脳切片ではタウロコール酸が検出されたのに対しCyp7a1ホモKOマウス脳切片ではタウロコール酸存在量の低下が見られた。今後、このCyp7a1ホモKOマウスにおいて脳梗塞手術をおこない、梗塞範囲変化、記憶学習に関する行動実験、グリア細胞動態等を評価し、正常脳機能および脳梗塞病態における脳由来胆汁酸シグナルの生理的意義を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の実施状況について、令和3年度は胆汁酸合成不全マウスの作製とそれを用いた脳由来胆汁酸の機能解析を予定していた。胆汁酸合成不全マウスとしてCyp7a1 KOマウスの樹立をおこなったが、ヘテロKOマウスは順調に出生・生育するもののホモKOマウスの生存率が極端に低くそのため研究計画が当初の予定よりもやや遅れている。Cyp7a1ホモKOマウスの生存率低下は胆汁酸合成低下やビタミンD合成低下に起因する事が報告されているため、飼育の際にこれらを含めた餌を与えているが劇的な改善は見られず含有量の条件検討をおこないつつ生存率向上を図っている。
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今後の研究の推進方策 |
胆汁酸合成不全マウスとして、CYP7A1-loxPマウスを新たに作製しNestin-Creマウスとの交配によりニューロン特異的Cyp7a1KOマウスの作製をおこなう。同時に、胆汁酸受容体(TGR5、FXR)を標的としてTgr5-loxPマウスおよびFxr-loxPを作製しNestin-Creマウスとの交配によりニューロン特異的胆汁酸シグナル不全マウスの作製をおこなう。これらのマウスにおいて脳梗塞手術を施し、グリア細胞動態、梗塞容積、行動評価等をおこない個体レベルでの影響を明らかにすることで、脳梗塞病態における脳由来胆汁酸の意義を明らかにすることができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画では当該年度内に、脳梗塞領域での胆汁酸可視化、律速酵素CYP7A1発現細胞の同定、CYP7A1発現変化の解析の結果をまとめ英文生命科学雑誌にて発表する事を目指しておりその英文校正費、投稿費を計上していた。実際には、胆汁酸合成不全マウスの作製・解析がやや遅れているため、投稿に係る費用の一部が次年度使用額として発生した。次年度は英文生命科学雑誌にて発表するための費用として使用する。
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