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2023 年度 実施状況報告書

脳由来胆汁酸の機能解明と脳梗塞新規治療デザイン確立への応用

研究課題

研究課題/領域番号 21K06763
研究機関関西医科大学

研究代表者

大江 総一  関西医科大学, 医学部, 講師 (70599331)

研究分担者 和田 幸恵 (平原幸恵)  関西医科大学, 看護学部, 教授 (70457969)
林 真一  関西医科大学, 医学部, 講師 (80599572)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード脳梗塞 / 胆汁酸 / CYP7A1 / 転写後発現抑制 / ニューロステロイド
研究実績の概要

令和5年度は、質量顕微鏡法を用いて正常脳および中大脳動脈完全梗塞(pMCAO)マウス脳におけるタウロコール酸(TA)の直接的イメージングをおこない、胆汁酸類ブレインマップ作製に取り組んだ。これまでは、9-AAによる蒸着後にメタノールで再結晶化を施しネガティブモードにてTA解析をおこなっており、正常脳およびpMCAO脳の両方でTAを検出していたが他分子の同位体の混入の可能性が考えられたため、CHCAによる蒸着を施しポジティブモードにてTA解析をおこなった。この蒸着工程ではマトリックス蒸着装置iMLayerを用いて膜厚測定下でCHCA蒸着を施し、実験間やサンプル間での蒸着厚のばらつきを抑制することができた。TA解析の結果、複数存在するTA付加体の中のいくつかで正常脳に比べてpMCAO脳での存在量増加が確認された。この結果にはm/Zに他分子の同位体混入の可能性はないと思われ、ネガティブモードよりもより正確な検出が可能となった。さらに、検出感度を向上させるためにiMLayerでの蒸着後にCHCAをスプレー塗布する2段階蒸着を行った結果、より高感度でTAを検出することが可能となり以降のTA解析をこの方法で統一する事とした。今後、この方法により脳全体における検出をおこない胆汁酸類ブレインマップを作製する予定である。さらに令和5年度は、昨年度に引き続き、胆汁酸合成律速酵素であるCyp7a1を欠損するマウスの解析をおこなった。質量顕微鏡法解析によりホモKOマウス正常脳ではTA存在量の減少が見られた。現在、複数の交配ペアにおいてホモ/ヘテロを含め出生率の極端に低下する問題が生じており十分な個体数が得られていない。今後、十分な個体数が得られる環境を整え、Cyp7a1ホモKOマウスにおいて脳梗塞手術をおこない正常脳機能および脳梗塞病態における脳由来胆汁酸シグナルの生理的意義を明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究課題の実施状況について、令和5年度は脳での胆汁酸ブレインマップ作製、胆汁酸合成不全マウスの機能解析を予定していた。質量顕微鏡法によるブレインマップ作製は検出方法を確定することが出来概ね順調に進んでいる。胆汁酸合成不全マウスとしてCyp7a1 KOマウスの樹立をおこなったが、昨年度に引き続きヘホモKOマウスの生存率が低く、その対応として飼育の際に胆汁酸やビタミンDを含めた餌を与えているが劇的な改善は見られていない。さらにヘテロKOマウス同士の交配により系統を維持しているが、これまで以上にホモ/ヘテロを含めた出生数が極端に減少している。飼育環境に問題はないためCyp7a1 による表現型の可能性も含め対応策を講じて系統維持に努める。十分な個体数が得られる環境を整えられ次第、Cyp7a1ホモKOマウスにおいて脳梗塞手術をおこない、梗塞範囲変化、記憶学習に関する行動実験、グリア細胞動態等を評価し、正常脳機能および脳梗塞病態における脳由来胆汁酸シグナルの生理的意義を明らかにする予定である。

今後の研究の推進方策

本研究課題では脳での胆汁酸機能を明らかにするためにその機能不全マウス作製をおこなっている。現在は、胆汁酸合成不全マウスとして、コンベンショナルなCyp7a1 KOマウスを作製し解析を行っているが、Cyp7a1-loxPマウスを新たに作製しNestin-Creマウスとの交配によりニューロン特異的Cyp7a1KOマウスの作製をおこなう予定である。また、胆汁酸受容体(TGR5、FXR)を標的としてTgr5-loxPマウスおよびFxr-loxPを作製しNestin-Creマウスとの交配によりニューロン特異的胆汁酸シグナル不全マウスの作製を予定している。これらのマウスにおいて脳梗塞手術を施し、グリア細胞動態、梗塞容積、行動評価等をおこない個体レベルでの影響を明らかにすることで、脳梗塞病態における脳由来胆汁酸の意義を明らかにすることができると考えている。

次年度使用額が生じた理由

令和5年度はTGR5,FXRのコンディショナルノックアウトマウス作製を予定していたが計画がやや遅れているため次年度使用額が生じた。令和6年度に計画予定の実験を実施する際に使用する。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] OLIG2 translocates to chromosomes during mitosis via a temperature downshift: A novel neural cold response of mitotic bookmarking.2024

    • 著者名/発表者名
      Hayashi S, Seki-Omura R, Yamada S, Kamata T, Sato Y, Oe S, Koike T, Nakano Y, Iwashita H, Hirahara Y, Tanaka S, Sekijima T, Ito T, Yasukochi Y, Higasa K, Kitada M.
    • 雑誌名

      Gene

      巻: 891 ページ: 7829

    • DOI

      10.1016/j.gene.2023.147829.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] OLIG2 is an in vivo bookmarking transcription factor in the developing neural tube in mouse2023

    • 著者名/発表者名
      Hayashi S, Oe S, Koike T, Seki-Omura R, Nakano Y, Hirahara Y, Tanaka S, Ito T, Yasukochi Y, Higasa K, Kitada M.
    • 雑誌名

      Journal of Neurochemistry

      巻: 165 ページ: 303-317

    • DOI

      10.1111/jnc.15746

    • 査読あり
  • [学会発表] 長鎖非コードRNA linc00944はPI3K/Akt経路を介してグリオーマ幹細胞の細胞死を制御する2024

    • 著者名/発表者名
      岩下洸, 大江総一, 佐藤輝英, 林真一, 小池太郎, 関亮平, 中野洋輔, 佐藤勇輝, 平原幸恵, 北田容章
    • 学会等名
      第129回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] デジタル組織標本を導入した組織解剖学教育における新規実習教材2024

    • 著者名/発表者名
      中野洋輔, 大江総一, 林真一, 小池太郎, 関亮平, 岩下洸, 佐藤勇輝, 平原幸恵, 北田容章
    • 学会等名
      第129回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] 末梢神経におけるスルファチド分子種の機能的多様性の解析2024

    • 著者名/発表者名
      平原幸恵, 蒲生恵三, 小池太郎, 大江総一, 林真一, 関亮平, 中野洋輔, 岩下洸, 佐藤勇輝, 北田容章
    • 学会等名
      第129回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] 先天性中枢性低換気症候群に見られる変異型PHOX2Bの染色体局在の変化2024

    • 著者名/発表者名
      佐藤勇輝, 林真一, 大江総一, 小池太郎, 中野洋輔, 関亮平, 岩下洸, 北田容章
    • 学会等名
      第129回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] 長鎖非コードRNA MANCRはOLIG2およびCD44の遺伝子発現制御を介してグリオーマ幹細胞のMES型細胞形質を維持する2024

    • 著者名/発表者名
      大江総一, 佐藤輝英, 岩下洸, 林真一, 小池太郎, 関亮平, 中野洋輔, 佐藤勇輝, 平原幸恵, 北田容章
    • 学会等名
      第129回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] 有尾両生類の神経幹細胞の特殊性について2024

    • 著者名/発表者名
      関亮平, 林真一, 大江総一, 佐藤勇輝, 小池太郎, 中野洋輔, 岩下洸, 平原幸恵, 北田容章
    • 学会等名
      第129回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] イモリ型脊髄再生における再生遺伝子の特定と原理の解明2024

    • 著者名/発表者名
      林真一, 関亮平, 佐藤勇輝, 大江総一, 小池太郎, 中野洋輔, 岩下洸, 伊藤健, 安河内彦輝, 日笠幸一郎, 北田容章
    • 学会等名
      第129回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] LncRNA MANCR is involved in the maintenance of the malignant phenotype of glioma stem cells2023

    • 著者名/発表者名
      大江総一, 佐藤輝英, 林美樹夫, 磯﨑春菜, 岩下洸, 林真一, 小池太郎, 関亮平, 中野洋輔, 佐藤勇輝, 平原幸恵, 北田容章
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] メラトニンおよびその代謝産物N-acetyl-5-methoxy kynuramine(AMK)による学習記憶能力の増強作用と作用機序の研究2023

    • 著者名/発表者名
      岩下洸, 大江総一, 佐藤輝英, 林真一, 小池太郎, 関亮平, 中野洋輔, 佐藤勇輝, 平原幸恵, 北田容章
    • 学会等名
      第23回日本抗加齢医学会総会
  • [備考] 関西医科大学 医学部 基礎社会学系 解剖学講座

    • URL

      http://www3.kmu.ac.jp/anatomy/

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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