研究課題
心外膜脂肪組織は心房細動などのリズム異常に関与していることを我々はすでに報告している(Abe I, Shinohara T, et al. Heart Rhythm. 2018;15:1717-1727.)。一方、心房細動患者では洞結節機能が低下していることがすでに多く報告されている。我々の施設では、心房細動患者における自律神経反射について臨床研究を行っており、薬物負荷に反応した洞調律時心拍数の変化が心房細動の再発およびカテーテルアブレーション手術の成功率に関与していることを2022年3月に第86回日本循環器学会学術集会において報告した。さらに、心房細動患者に対して、電気的除細動後の洞調律維持に関して、心房組織の線維化の指標である心電図におけるP波のfrgagmented potentialが重要な役割を担っていることも2022年3月に第86回日本循環器学会学術集会において報告した。我々は、これらを踏まえて、心外膜脂肪組織が洞房結節細胞組織の線維化を介して洞不全症候群の発症に関与するメカニズムについて研究している。現在、下記のように本研究を進めている。(1)当院心臓血管外科手術時に採取することができた心外膜脂肪組織と心房心筋組織の組織標本をそれぞれMasson's Trichrome染色および各種免疫染色を行って評価する。(2)標本採取できたケースでそれぞれの臨床的背景を元にしたデータベースを構築中である。(3)今後、肥満モデルラットを用いた実験システムを構築して、心外膜脂肪組織と洞結節組織に関する機能解析を行っていく方針である。現在、器官培養システムを用いた実験を進行中である。
3: やや遅れている
心外膜脂肪が洞結節障害を誘導するメカニズムの解明において、心房筋の線維化の関与を明らかにするのに時間がかかっている。しかし、実験進行のための当院心臓血管外科手術時サンプル採取は順調に行えているため、遅れは挽回できるものと考えている。
これまで解明できたことをさらに進めていく。具体的には、我々は以前糖尿病マウスにおいて洞結節障害が起こるメカニズムを解明・報告し(Kondo H, Shinohara T, et al. Circ Arrhythm Electrophysiol. 2018)、および臨床研究から心房筋の線維化が洞調律維持に関与していることを明らかにし日本循環器学会学術集会において報告した。これら得られた知見を利用して、今後の研究を進めていく。
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