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2022 年度 実施状況報告書

hERGチャネルのNon-domain swapped構造に基づく開閉機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 21K06771
研究機関大分大学

研究代表者

粂 慎一郎  大分大学, 医学部, 助教 (90794579)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードイオンチャネル / hERGチャネル / 構造機能連関 / 分子生物学 / 電気生理学
研究実績の概要

電位作動性カリウムチャネルファミリーに属するhERGチャネルは、N末端およびC末端細胞内領域に存在する複数の特徴的なドメインや、膜貫通領域に見られるNon-domain swapped構造に基づき、膜貫通領域の直下に4つの細胞内ドメイン(N末端側からN-tailドメイン、S2-S3リンカードメイン、S4-S5リンカードメイン、Cリンカードメイン)が集中して配置されている独自の分子構造をもつ。申請者はこれまでに、これら4つの細胞内ドメインが互いに相互作用し得る位置関係にあり、各ドメインへの変異の導入が、その特徴的な遅い脱活性化を著しく加速させることを見出した。しかし、これらのドメイン間相互作用の実態と、それによるチャネルの構造機能連関の詳細は、未だ不明な点が多い。
本研究では、これら4つの細胞内ドメインに焦点を当て、①これらのドメイン間で形成される相互作用の有無、また、チャネルの開・閉状態に依存した各ドメイン間相互作用の局所的な構造変化と、それに伴う主要なアミノ酸の位置関係の解明を目指す。さらに、②ゲーティングに伴うチャネル分子全体の構造変化における各ドメイン間相互作用の役割と、それに基づく遅い脱活性化の制御機構との関係性を解明すべく、FRETを用いた解析を計画している。
本年度は、初年度より取り掛かっていた上述の①と②の解析の準備の続きから開始し、これらの分子生物学的な基盤の作製や実験機器等の準備を完了させるに至った。その後、培養細胞におけるhERGチャネルの発現量の改善や新規の変異体の設計等も並行し、いくつかの結果が得られ始めている。その他、本研究計画の実験手法等を応用することにより、hERGチャネルに対する薬剤や細胞内イオン組成の影響に関する解析も実施しており、これらの解析によって得られた結果は、論文や学術大会で発表するに至った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究では、hERGチャネルの遅い脱活性化に関する構造機能連関の解明を目指し、Non-domain swapped構造に伴い膜貫通領域直下に集中して配置されている特徴的な4つの細胞内ドメインに焦点を当て、「研究実績の概要」で上述した①および②の解析を計画している。
①に関しては、4つの細胞内ドメインに存在する任意のアミノ酸をシステインに置換し、それらを組み合わせたシステイン二重変異体を作製した後、膜電位固定下で酸化剤添加を添加した際のジスルフィド結合形成の過程を電流の変化としてパッチクランプ法により解析する。本年度は、初年度より開始した各部位のアミノ酸のシステイン変異体の作製を完了させるに至った。また、いくつかのアミノ酸に関しては、システイン以外のアミノ酸に置換した変異体も作製し、アミノ酸の種類による表現型の変化等の解析も開始している。また、実験で得られるhERGチャネルの電流量を増加させ、より詳細な解析を行うため、プラスミド上のコザック配列の見直しや、より高い発現量が期待できるHEK293T細胞への切り替えなどの検討も行っている。一方で、パッチクランプ法に使用している顕微鏡セットにおいて蛍光光源として使用している水銀ランプの電源装置に故障が生じたため、新しい実験機器の購入やその後のセットアップなどを行う必要が生じた。
②に関しては、膜貫通領域と細胞内ドメインそれぞれに蛍光タンパク質(CFPとYFP)を融合させた変異体を作製し、分子構造の変化をCFP-YFP間のFRET効率の変化として解析する。こちらは初年度より顕微鏡の準備を開始しており、本年度までに準備を完了させている。
以上のように、特に①については、実験機器の故障による影響のため研究を持続的に行えない期間が生じたため、本研究における現在までの進捗状況は、申請時の研究実施計画からやや遅れていると思われる。

今後の研究の推進方策

本研究は今後とも、hERGチャネル独自のNon-domain swapped構造と、それに起因する4つの細胞内ドメインの相互作用等の位置的な関係性に焦点を当て、このチャネルの遅い脱活性化に関する構造機能連関の解明を目指す。
本年度の研究では、「現在までの進捗状況」にて上述したように、①の実験・解析に関して、パッチクランプ法に使用している顕微鏡セットの蛍光光源である水銀ランプの電源装置が故障する問題が生じた。しかし、本年度内に新しい電源装置を購入し、セットアップも完了しているため、次年度ではまず①の実験・解析の完了を目標に、4つの細胞内ドメイン間で形成される相互作用の有無、また、チャネルの開・閉状態に依存した各ドメイン間相互作用の局所的な構造変化と、それに伴う主要なアミノ酸の位置関係の解明を目指す。
②の実験・解析についても、①の結果から得られた情報を基に、ゲーティングに伴うチャネル分子全体の構造変化における各ドメイン間相互作用の役割と、それに基づく遅い脱活性化の制御機構との関係性の解明を目指す。
また、得られた結果をまとめ、論文としての発表、または学術大会での発表を考えている。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、実験装置の故障により一時的に実験ができない期間が生じてしまい、それ以降の実験・解析で使用する予定であった物品や試薬等の購入が遅れたため、次年度使用額が生じる結果となった。
ここで生じた次年度使用額に関しては、研究実施計画に基づき、今後の実験・解析のために使用する予定である。具体的には、当年度で終了できなかった①の解析や、続く②の解析を行う上で必要になる試薬や物品等の購入費、学術大会参加のための旅費、また、論文として発表する場合はその費用として使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Electrophysiological evaluation of an anticancer drug gemcitabine on cardiotoxicity revealing down-regulation and modification of the activation gating properties in the human rapid delayed rectifier potassium channel2023

    • 著者名/発表者名
      Wei Mengyan、Wang Pu、Zhu Xiufang、Morishima Masaki、Liu Yangong、Zheng Mingqi、Liu Gang、Osanai Hiroki、Yoshimura Kenshi、Kume Shinichiro、Kurokawa Tatsuki、Ono Katsushige
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 18 ページ: e0280656

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0280656

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 細胞内Ca2+はMEK1,2-ERK1,2経路およびCaM-CaMK経路を介する転写制御作用によってhERGチャネル電流を調節する2022

    • 著者名/発表者名
      魏 孟厳、粂 慎一郎、小山内 博基、吉村 健司、黒川 竜紀、小野 克重
    • 学会等名
      第73回西日本生理学会

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公開日: 2023-12-25  

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