研究課題/領域番号 |
21K06772
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
山下 勝幸 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (20183121)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電気的軸索誘導 / インテグリン / カルシウムイオン / 網膜神経節細胞 / 微小管 / 蛍光色素 / 鶏胚 / 電場 |
研究実績の概要 |
昨年度(2021年度)は軸索の細胞膜近傍でカルシウムイオンが非対称的に分布することを明らかにした。即ち、電場内ではカルシウムイオン流が生じ、網膜神経節細胞の軸索表面において陽極側では陰極側より多くのカルシウムイオンが集積することを、カルシウム感受性蛍光色素を用いた画像解析から明らかにした。インテグリンの細胞外ドメインにおいてリガンド結合部位にカルシウムイオンが配位するとリガンドとの親和性が低下し抑制性に活性制御される。従って、電場内では網膜神経節細胞の軸索に発現するインテグリンの活性は陽極側で低下し、陰極側では上昇すると考えられた。インテグリンが活性化するとPI3K-Akt経路を介してGSK3が抑制されることを既に明らかにした(18K06857報告書)。GSK3が抑制されると微小管が安定化されるので、電場内において微小管は軸索の陰極側でより安定化されると予想された。 当該年度(2022年度)は、微小管をラベルする蛍光色素(TubulinTracker Green)を用いて網膜神経節細胞の軸索内における微小管の分布を解析した。鶏胚から網膜を摘出し、網膜切片をMatrigel内で21時間培養して神経節細胞の軸索を伸長させた。次に電場内で3時間培養した後、蛍光染色した。その結果、軸索が陰極側へターンする部位において微小管は非対称的に分布することを明らかにした。即ち、微小管は陰極側に偏って分布した。これを定量化するために、asymmetry index (AI)を導入し、微小管の非対称分布を実証した。Nocodazoleで30分間処理した後も同様な結果を得た。これらの結果から、電場内で軸索がターンする場合、微小管は陰極側で安定化されることが明らかになった。軸索は安定化された微小管の方向へ伸長するので、電場内で軸索は陰極側へ伸長すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
超高倍率共焦点蛍光撮像システムが昨年度に引き続き有効に活用できたため、直径が1-2ミクロンの軸索内における微小管の分布を解析することが可能となった。さらに、これまでの結果を論文としてまとめることができ、本年度中に投稿できたため。
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今後の研究の推進方策 |
1) 電場内における軸索の屈曲度合いを定量化し統計的に記述する。具体的には、蛍光色素でラベルした微小管の軸索内分布を屈曲ポイントにおいて計測し、「研究実績の概要」で述べたasymmetry index (AI) を複数の軸索について統計的に記述する。これらの定量化データを論文に追加する。 2) 電気的軸索誘導における軸索の屈曲に対するインテグリンの関与を定量的に実証する。具体的には、電流の通路を狭めたmicrochannel chamberを用いて電場を収束させ、この電場内で網膜切片を培養して神経節細胞の軸索を収束させる。軸索を蛍光色素でラベルし、軸索の収束角度と蛍光強度分布を計測する。これらの計測データを論文に追加する。 3) 令和5年度は当該研究課題の研究実施期間の最終年度にあたるため、投稿した論文の受理までのプロセスを完遂する。さらに研究期間全体の成果を学会発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗インテグリン抗体を使用する実験の回数を減らしたので当初予定した量の抗体を購入しなかったため残額が生じた。翌年度分と合わせて成果発表(学会参加旅費、論文出版にかかる費用等)のために使用する予定である。
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