研究実績の概要 |
研究代表者は、発生期の網膜内に将来の視神経乳頭へ向かって収束する細胞外電位勾配が存在し、網膜神経節細胞の軸索はこの電場に誘導されて伸長することを発見した(Yamashita, 2013)。2018年度基盤研究(C)において、インテグリンと細胞外Ca2+が電気的軸索誘導のキー分子である証拠を得た。インテグリンはリガンド結合ドメインにCa2+が配位するとその活性が抑制される。本研究では、1) 電場が起こすCa2+流により軸索細胞膜近傍でCa2+が非対称に分布するか、2) インテグリンが非対称に活性化されると微小管が非対称に安定化されるか、を明らかにすることを目的とした。2021年度では超高倍率共焦点蛍光撮像システムを構築し、軸索細胞膜近傍のCa2+が陽極側に集積することを明らかにした。2022年度では、微小管をラベルする蛍光色素を用いて微小管の分布を解析した。その結果、軸索が陰極側へターンする部位において微小管が陰極側に偏って分布することを明らかにした。微小管の分布を定量的に解析するために、asymmetry index (AI) を導入して微小管の非対称分布を定量的に実証した。Nocodazoleで30分間処理した後も同様な結果を得た。これらの結果から、電場が起こすCa2+流によりインテグリンの活性が非対称になり、軸索内で微小管が陰極側で安定化されることにより軸索は陰極側へ向かって伸長することが明らかになった。最終年度の2023年度では、微小管分布の定量的解析を継続するとともに、収束する電場を設定して軸索を収束させ、軸索の収束角度と収束密度を定量的に解析した。これらの結果を加えて、Nature出版のオープンアクセス誌であるCommunications Biologyに再投稿し、reviseを重ねて6月20日に受理され、6月30日にWeb上で公開された。
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