研究課題
本研究は、心室性不整脈発症のきっかけとなる現象として知られる「撃発活動」の発生機序を明らかにすることで、突然死を未然に防ぐための方法論開発を目標に実施された。心室筋細胞の活動電位が終了する前に一過性に脱分極する「早期後脱分極」(Early afterdepolarization: EAD)は、心室頻拍・心室細動といった致死性不整脈のトリガーであると考えられてきた。これまでに、心室組織内において(1)EADが連鎖的に発生することで、高電位の局所領域が形成される;(2)形成された局所領域の境界面の特異的形状;以上の2つの条件によって撃発活動が形成されることを明らかにした。最終年度においては、心室組織を多方向から刺激し、その興奮伝播ダイナミクスを検討することで、心室組織の催不整脈基質の特徴を明らかにした。その結果、刺激方向に関わらず、撃発活動は指向性を示す事を見出した。撃発活動形成の普遍性(モデル依存性の有無)を確かめるために、Kurata心筋細胞モデルに変えて、ten Tusscher等によるヒト心室筋モデル(TP06モデル)から構成した心室組織モデルで、Kurataモデルと同様の検討を行った。しかし、TP06モデルでの撃発活動形成条件を得ることができなかった。活動電位の再分極特性の違いが影響していると予想している。この点は更なる検討が必要である。最後に、撃発活動生成制御の可能性を検討した。一過性外向きKチャネルを抑制することで、撃発活動の生成のみならずEADの発生自体を抑制できる可能性を新たに見出した。本成果は、撃発活動の発生機序に基づいた突然死予防の新たな方法論創出に資する重要な理論的成果であり、今後の展開の基礎になるものである。
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Computer Methods and Programs in Biomedicine
巻: 240 ページ: 107722~107722
10.1016/j.cmpb.2023.107722