研究課題/領域番号 |
21K06777
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
籠田 智美 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (00291807)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | メタボリックシンドローム / 血管周囲脂肪組織 / 動脈拡張能 / アペリン / アンジオテンシン II 1型受容体 |
研究実績の概要 |
内臓脂肪型肥満を基盤とするメタボリックシンドローム (MetS)は、慢性腎臓病の発症や進行に深く関わっている。低下した腎機能は元に戻らないことから、腎機能低下の発症予防や進行抑制が極めて重要である。一方、近年、血管周囲の脂肪組織 (PVAT) は、血管抵抗性を調節していることが解ってきた。我々はこれまでに、MetSの進行に伴い生じる腸間膜動脈の拡張能低下を、PVATが代償的に補完していることを見出している。このことから、腎動脈PVATの代償効果が破綻すると、腎機能低下を引き起こす要因となると考えた。そこで、「PVATと血管内皮細胞のクロストーク」を視点とし、腎動脈拡張能とPVATの代償効果との関連を検討する。 本年度は、MetSにおけるPVATによる動脈拡張増強効果の変動に関わる因子について検討した。MetSであるSHRSP.ZFラットの腸間膜動脈PVATによる動脈弛緩増強効果は、雌の方が雄に比べ長期的に維持されるが、加齢に伴い消失することを明らかとした。また、雌におけるPVATによる効果は、脂肪細胞が産生・分泌するアペリン量に依存すること、PVAT機能の消失には、アンジオテンシン II 1型受容体(AT1R)の活性を抑制的に制御するATRAPの発現が低下することにより生じるAT1Rシグナルの亢進が関与すると考えられた。これらの変化は、発症時期は異なるものの、雄と同様の変化であった。また、腎動脈PVATにおける動脈拡張機能への影響について腸間膜動脈周囲PVATの場合と比較検討し、PVAT効果に動脈部位差があるか、さらに、腎機能の指標となる尿タンパクと関連があるかについて検討し、興味ある知見を見出した。現在、学術論文にて報告すべく執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は本研究の基盤となったメタボリックシンドローム (MetS)における腸間膜動脈周囲の脂肪組織 (PVAT) を用いて、その効果に関与する因子および効果の変動に関与する因子の検討を中心に進め、その成果を学術学会および学術論文にて報告した。また現在、腎動脈周囲PVATについての研究成果をまとめ、学術雑誌にて報告すべく準備している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は当初の計画通りに実験を進め、得られた成果を学術学会や論文にて報告できた。今後も計画に沿って進めていく予定である。本年度の研究成果である血管周囲脂肪組織 (PVAT) による動脈拡張増強効果に関与するアペリンと、PVAT効果の変動に関与すると考えられるアンジオテンシン II 1型受容体(AT1R)シグナル活性との関連性についてさらに検討を進める。また、メタボリックシンドローム (MetS)の諸症状とPVAT効果の関連性について、腎動脈PVAT動脈拡張代償効果の変動と腎機能低下の発症時期や程度の関連性について、順次明らかにしてくいく。得られた研究成果は、国内外の学術学会にて発表し、論文化していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度得られた研究成果を発表した学術雑誌の掲載にかかる費用として予定していたが、請求が年度をすぎたために次年度使用額が生じた。請求金額が確定次第、直ちに執行する。
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