研究課題
オキシトシン(OT)は疼痛伝達に関わるが、詳細な機序は解明されていない。特に、内因性OTと疼痛伝達に関する報告はほぼ皆無である。我々は、OTニューロン特異的に薬剤興奮性人工受容体(hM3Dq)と赤色蛍光タンパク(mCherry)を発現させた遺伝子改変ラットを作出した。1年目の研究実績の概要は以下のとおりである。(1)OT-hM3Dq-mCherryトランスジェニックラットの維持・繁殖を行い、hM3Dqの外因性リガンドであるクロザピン-N-オキシド(CNO)によってOTニューロンが特異的に活性化することを示した。(2)CNO皮下投与120分後、下行性疼痛抑制系として知られる縫線核(DR)と青斑核(LC)が有意に活性化し、脊髄後角における抑制性介在ニューロンが活性化した。(3)内因性OTニューロンの活性化によって、神経障害性疼痛モデルラット(Seltzerモデル)および炎症性疼痛モデルラット(ホルマリンモデル・カラゲニン膝関節炎モデル)における機械刺激閾値と温覚閾値が有意に上昇し、OT受容体アンタゴニスト腹腔内投与もしくは髄腔内投与によってこれらの閾値上昇が打ち消された。(4)炎症性疼痛モデルラットにおいて、内因性OTの活性化は視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸を活性化させることなく抗炎症効果を発揮した。(5)内因性OTが肥満細胞における脱顆粒を抑制し抗炎症効果を惹起しているものと推測された。これらの結果は、内因性OTが液性および神経性調節を介して疼痛伝達抑制と抗炎症効果に関与することを示唆する。以上は当初の研究計画通りに進捗している。2年目の研究計画として、炎症下における内因性OTのHPA軸に与える影響の解明、肥満細胞と内因性OTの関連性を解明する。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画通りに進行しており、順調である。
現時点では計画は順調に進捗している。2年目の研究計画として、炎症下における内因性OTのHPA軸に与える影響の解明、肥満細胞と内因性OTの関連性を解明する。1年目の研究結果から、当初の研究計画では予想していなかった結果が得られたこともあり、研究計画を適宜修正して今後の実験予定を計画する。これらの結果がまとまったら、国際学術雑誌への投稿準備を行う。
本研究ではオキシトシンの血中濃度測定を行う必要がある。我々は、ラジオイムノアッセイ法を用いてオキシトシンの血中濃度測定を行っている。2022年5月にサンプルの血中濃度を測定予定であり、ラジオアイソトープの購入費(約50万円)として使用する予定である。測定予定が新年度にずれ込んだため、次年度使用予定額として計上している。なお、サンプルは既に準備できており、ラジオアイソトープが購入できればいつでも測定できる状況である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)
The Journal of Physiological Sciences
巻: 71 ページ: -
10.1186/s12576-021-00802-4
Peptides
巻: 142 ページ: 170555~170555
10.1016/j.peptides.2021.170555