研究課題/領域番号 |
21K06781
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
豊田 太 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (90324574)
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研究分担者 |
姫野 友紀子 立命館大学, 生命科学部, 助教 (10534365)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イオンチャネル / L型カルシウムチャネル / イオン透過性 / 単一チャネル記録 |
研究実績の概要 |
心臓の洞房結節のペースメーカー細胞に特異的に観察される持続性内向きナトリウム電流は、心臓の拍動リズムの形成に寄与すると考えられているものの、その分子基盤の解明は喫緊の課題である。我々はL型カルシウムチャネルのCav1.3イソフォームをノックアウトしたマウスでこの電流が消失することを見出しているが、Caイオンに高い選択性を示すL型CaチャネルがどのようにNa電流を発生させる仕組みは明らかでない。本研究は、L型Caチャネ ルのイオン透過機構を詳細に調べ、心臓ペースメーカー細胞の持続性内向き電流との関連を明らかにすることを目的としている。 昨年度のホールセルパッチクランプ実験ならびにAlmers & McCleskeyのモデル(AMモデル)を用いた検証の結果、L型Caチャネル(Cav1.3)には細胞外Caイオン濃度に依存してイオン選択性が変化する2つのモードが存在する可能性が示唆された。 そこで、令和4年度は実験とシミュレーションで各モードのシグナル分離をさらに試みた。HEK293細胞の異種性発現系において、細胞外Caイオン濃度を変化させCav1.3の単一チャネル電流記録を行った。得られたシグナルの開閉パターンをコンピューターシミュレーションによる予想と比較分析したところ、Cav1.3は細胞外Caイオン濃度が極めて低いときCaイオン選択性が極めて高く、生理的Caイオン濃度に近づくにつれ選択性が低下しNaイオンが流れ始めることがわかった。 この研究成果は、令和4年度の日本生理学会大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた実験の中には遂行できていないものもあるが、昨年度の研究成果からさらに一歩踏み込んだ知見を得ることができ、本研究の目的達成に向けて着実にアプローチしている。
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今後の研究の推進方策 |
パッチクランプ実験とコンピューターシミュレーションによりL型カルシウムチャネルの新しい透過機構をさらに検証したい。また最終年度に差し掛かるため、持続性内向き電流との関連性を明らかにしながら研究をまとめる作業に入りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
施設の改修工事に伴う研究室に移転のため、実験装置や消耗品の調達を差し控え、研究活動を中断した期間が生じた。研究環境が整い次第、順次調達を再開しているところである。
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