研究課題/領域番号 |
21K06785
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
渡辺 賢 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 教授 (60191798)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 平滑筋 / プロテインホスファターゼ2A / ミオシン軽鎖キナーゼ / プロテインキナーゼC / ラッチ |
研究実績の概要 |
プロテインホスファターゼ2A(PP2A)の平滑筋収縮増強の作用点を探るため、2022年度に引き続き、細胞膜を破壊したスキン度平滑筋標本を用いて、PP2A阻害薬rubratoxin A及び低濃度okadaic acidによる収縮抑制効果がどの様な条件で惹起されるかを、主にスキンド平滑筋弛緩過程の解析を基に検討した。ミオシン軽鎖キナーゼ阻害薬ML-7存在下でもrubratoxin Aの弛緩促進効果は同様に現れることから、PP2Aは少なくともミオシン軽鎖キナーゼ活性賦活以外に作用点を持つことが示唆される。一方、アクチン重合阻害薬によるスキンド平滑筋弛緩促進時(業績1)に、PP2A阻害薬の投与はそれ以上の弛緩促進をもたらさなかった。したがって、PP2Aは細いフィラメントに働いて平滑筋力学応答を変調することが考えられる。細胞内におけるPP2Aの作用点候補として知られるプロテインキナーゼC(PKC)は、細いフィラメント制御を介して収縮促進・弛緩抑制をもたらす可能性が指摘されているため、予備実験としてスキンド平滑筋弛緩に対するPKC賦活薬phorbol 12,13 dibutyrate (PDBu)の効果を検討し、PDBuが弛緩を延長し、それは平滑筋張力維持機構(所謂ラッチ)の活性化によるものであることが明らかになった(業績2)ため、このPDBuによる平滑筋弛緩に対するrubratoxin A及びokadaic acidの効果の検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生理学的、薬理学的実験については当初の目論み通り研究を進めることができた。また、課題となっていた高感度リン酸化定量を可能とするPhos-tag SDS法を用いた、微小平滑筋標本のリン酸化部位同定については、COVID-19感染症対応が前年度よりも軽減したため、岡山理科大学講師・竹谷浩介講師から手法を直接学ぶことができ、研究を進めている。 一方、X線回折については、まだ十分な研究体制を回復できなかったため、昨年度は一昨年度に引き続き見送らざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、生理学・薬理学的実験を進め、PP2A平滑筋収縮増強の作用点を明らかにしていく。また、X線回折実験を再開して、平滑筋収縮フィラメント構造に対するPP2Aの効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
X線回折実験の再開ができなかったために、消耗品(実験動物、薬品)や旅費(高エネルギー加速器研究機構)が予想より少なかったことによる。次年度はX線回折実験を再開し、研究計画に遅滞がないように努力する。
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