研究課題
持久運動のアスリートには心拍数の著しい低下(徐脈)の発生リスクが高いが、その分子メカニズムの全貌は明らかでない。私たちは、こうした運動誘発性徐脈の原因として心拍動の指令塔である心臓ペースメーカ組織におけるイオンチャネル機能低下があること、それには特定の転写因子やマイクロRNA(miRNA)の発現変動が重要であることを見出しており、さらに本研究では、これまで不明であったペースメーカ組織固有の代謝様式を特徴づける遺伝子発現パターンをRNA-seq解析によって示した。心拍生成に関与するエネルギー基質の依存度解析を実施した結果、洞房結節の心拍調節には、作業心筋と同様に好気性代謝が優位だが、解糖系にも一定の依存性を有することが判明した。摘出右心房の電気生理学的解析では、ブドウ糖、乳酸、ピルビン酸、アミノ酸存在下で自発拍動数が維持されることから、これらをエネルギー基質として利用することが明らかとなった。一方、脂肪酸は心室筋における主たるエネルギー基質とされるが、心拍生成機能への高い寄与は少なくとも本解析において確認できていない。また、miRNAプロファイルを解析したところ、洞房結節には心臓の他の領域と共通するものだけでなく洞房結節特異的なmiRNAも含まれていることが見いだされ、心拍生成能におけるmiRNAの生理学的役割を示唆する結果が得られた。これらのmiRNAの機能解析は今後進めることとする。また、本研究では当初、心臓ペースメーカ組織に特有の生理学的なエネルギー代謝様式が持久運動によってどのように変化し、それが心拍生成機能にどのような影響を及ぼすのか検証する計画であったが、研究機関の異動に伴い実施困難となったため、これも今後の検討課題となった。
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Inflamm Regen
巻: 43 ページ: 11
10.1186/s41232-023-00258-6
https://researchmap.jp/ShuNakao
https://orcid.org/0000-0001-8990-1179
https://www.u-tokai.ac.jp/facultyguide/faculty/18266/
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