研究実績の概要 |
本研究期間においては、外因性細胞膨大の分子機構の解明と膨大細胞の調節性容積減少(Regulatory Volume Decrease:RVD)活性化による救済法の開発を目指した。 申請者は、そのために以下の検討項目を遂行した。はじめに予備的な実験にて一般的な細胞生理機能の研究に用いられる上皮HeLa細胞株のRVD能について、コールターカウンター法で検討した結果、低浸透圧性の細胞膨大後のRVDにより、30分以内に元の容積へと復帰した。この結果は、以前の研究報告と一致した。次に、RVD能を引き起こすための主要分子であるTRPファミリー、LRRC8ファミリー、カルシウム活性化カリウムチャネルファミリーの遺伝子発現をRT-PCR法で確かめた。さらに、浸透圧性細胞膨大時における前述のそれぞれイオンチャネル活性測定条件にて、機能的発現をパッチクランプ法で評価した。それぞれ、TRPM7、LRRC8ファミリー、IKチャネルが発現していることを確かめた。 外因的な細胞膨大刺激として、低浸透圧の他に虚血や炎症物質による細胞膨大についても検討を行った。それぞれの刺激の際に産生/発生される細胞内ATP, Ca2+, pHの変化についても生化学的な手法で測定した。 外因性細胞膨大を止め、細胞死から救済するためにイオンチャネルや細胞内シグナルのどの過程を標的にするべきか見極めるために、一連の細胞膨大過程とRVD過程における阻害剤や活性化剤の検討を行った。細胞死アッセイによってスクリーニングを行った結果、救済法の手掛かりとなる物質を確認した。 これらの実験結果によって、外因性細胞膨大が引き起こす細胞膨大機構および膨大細胞の救済方法の開発へ順調に進捗をしている。
|