研究課題/領域番号 |
21K06794
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森口 茂樹 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (70374949)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 周辺症状 / 新規MOA / KATPチャネル / 行動障害 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトでは、アルツハイマー病(AD)周辺症状を標的とした新規MOA(mode of action)による治療法確立に向けたAD病態発症機序の解明を目指す。申請者は、AD既存薬であるmemantineの新規作用機序としてATP感受性カリウム(KATP)チャネル抑制作用(Kir6.2チャネル抑制作用:認知機能改善効果、Kir6.1チャネル抑制作用:うつ症状改善効果を報告した。本プロジェクトでは、KATPチャネルに着目したAD周辺症状の病態発症機序の解明を目指し、AD新規治療戦略の構築を目指す。2021年度は、APP-KIマウスならびにKir6.2チャネル欠損マウスを用いて、BPSDの主症状である行動障害(攻撃性症状)について検証した。検証の結果については下記の通りである。1)APP-KIマウスにおいて、対照群(野生型)と比較すると、攻撃性症状の亢進が確認された。(Resident-intruder taskによる行動解析により評価)2) APP-KIマウスの大脳皮質において、Kir6.2チャネルの発現量の低下を確認した。(免疫ブロット法による評価)3)Kir6.2チャネル欠損マウスにおいて、対照群(野生型)と比較すると、攻撃性症状の亢進が確認された。(Resident-intruder taskによる行動解析により評価)4) Kir6.2チャネル欠損マウスの大脳皮質では、セロトニン神経系の機能低下が惹起されていることを確認した。(免疫ブロット法による評価)以上の結果より、APP-KIマウスならびにKir6.2チャネル欠損マウスにおいて行動障害(攻撃性症状の亢進)が惹起していることを同定できており、次年度には、より詳細な解析(マイクロダイアリシス法、電気生理学法等)を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
APP-KIマウスならびにKir6.2チャネル欠損マウスにおいて、行動障害(攻撃性症状の亢進)を確認しており、APP-KIマウスの大脳皮質においてKir6.2チャネルの発現量の低下が確認されたことから、Kir6.2チャネルの機能低下がAD周辺症状の原因の一女になる可能性が考えられる、本年度の研究成果により、次年度以降に実施予定の詳細なメカニズムの解析へ移行可能である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果により、APP-KIマウスならびにKir6.2チャネル欠損マウスにおいて、行動障害(攻撃性症状の亢進)を確認していることから、次年度以降は、そのメカニズムの研究を実施する。また、APP-KIマウスならびにKir6.2チャネル欠損マウスの大脳皮質を標的とした解析を実施する予定であり、以下の研究方針を検討中である。1)カテコルアミントランスポーター阻害薬(DA/NA/5-HT)の適応によりAPP-KIマウスの攻撃性症状の亢進に対するカテコルアミンの関与について検証する。2) マイクロダイアリシス法により、APP-KIマウスの攻撃性行動誘発時における内側前頭前皮質におけるカテコルアミン量(DA/NA/5-HT)について測定する。3) カテコルアミントランスポーター阻害薬(DA/NA/5-HT)の適応によりAPP-KIマウスの攻撃性症状の亢進と内側前頭前皮質におけるカテコルアミントランスポーターとの関連性について免疫ブロット法ならびに免疫組織化学的手法により検討する。4) 電気生理学的手法により、内側前頭前皮質スライス切片を用いてAPP-KIマウスにおけるシナプス伝達効率ならびにシナプスの可塑的変化について検討する。以上の解析により、APP-KIマウスならびにKir6.2チャネル欠損マウスにおいて行動障害(攻撃性症状の亢進)の原因追究を実施する。
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