研究実績の概要 |
本プロジェクトでは、アルツハイマー病(AD)周辺症状を標的とした新規MOA(mode of action)による治療法確立に向けたAD病態発症機序の解明を実施した。AD患者の特徴として、発症初期には中核症状(認知機能障害)ならびに発症後期には周辺症状(うつ症状・不安症状・攻撃性症状などの精神機能障害)の出現が報告されている。申請者は、AD既存薬であるmemantineの新規作用機序としてATP感受性カリウム(KATP)チャネル抑制作用(Kir6.2チャネル抑制作用:認知機能改善効果(Moriguchi S et al., Mol. Psychiatry 2018)、Kir6.1チャネル抑制作用:うつ症状改善効果(Moriguchi S et al., Neuroscience 2020))を報告した。本プロジェクトでは、AD周辺症状の病態発症機序の解明を目指し、ADモデルマウス(APP-KIマウス)ならびにKATP(Kir6.1/Kir6.2)チャネル欠損マウスを用いて、1) APP-KIマウスにおける攻撃性症状の亢進、2) Kir6.1/Kir6.2チャネル欠損マウスにおける攻撃性症状の亢進、3) Kir6.1チャネル欠損マウスにおけるうつ症状の亢進、の各課題について明らかとした。1)については、APP-KIマウスの攻撃性症状の亢進には、大脳皮質におけるセロトニン神経系の亢進が関与すること、2)については、Kir6.2チャネル欠損マウスにおいて攻撃性症状の亢進が確認されること、3)についてはKir6.1チャネル欠損マウスにおけるうつ症状の亢進には海馬歯状回における神経新生が関与することを同定した。
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