研究課題/領域番号 |
21K06800
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 雅美 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80434182)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 消化器がん / ELF3 / 細胞死 |
研究実績の概要 |
本研究では、正常な上皮組織の維持を担う転写因子であるELF3のがん抑制遺伝子としての機能について解析する。ELF3を遺伝子欠損したヒト正常胆管上皮細胞(HBDEC2)に、がん遺伝子(human papillomavirus type 16 E6 and E7, MYC T58A, HRAS G12V (EMR))をドキシサイクリン依存的に発現調節(tetOFF)することが可能なHBDEC2-EMR 細胞を用いて、ELF3とestrogen receptor ligand-binding domain(ERT2)の融合遺伝子を導入し、タモキシフェンによりELF3が活性する細胞を作製した。ELF3活性を制御したヒト胆管がん細胞株(HBDEC2-EMR ELF3-ERT2 細胞)を用いてトランスクリプトーム解析を行い、ELF3の活性化に伴い遺伝子発現が2倍以上増加する遺伝子群を用いてDAVID 解析を行った。その結果、これまでにヒト正常胆管上皮細胞で明らかにしたELF3による細胞接着や免疫反応の制御に加え、がん化させた胆管上皮細胞株では、ELF3 の活性化により細胞死や脂質代謝に関連する遺伝子の発現が増加していた。また、がん化させた胆管上皮細胞に4-O-タモキシフェンを処置し、タイムラプス顕微鏡を用いて細胞形態を観察したところ、ELF3の活性化により細胞質に複数の空胞化を伴う細胞死が認められた。これらのことから、正常上皮胆管細胞にがん遺伝子を導入することによりがん化したヒト胆管がん細胞株では、ELF3が活性化することにより、細胞死が引き起こされることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト正常胆管上皮細胞にがん遺伝子を発現させ、かつELF3を活性化することで細胞死が誘導されることが新たに明らかとなった。また、トランスクリプトーム解析においてもこの現象を支持する解析結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、これまでにin vitroで明らかにした現象を in vivoで検証する。具体的にはまず、HBDEC2-EMR ELF3-ERT2 細胞をマウスに皮下移植し、一度腫瘍を生着させた後にドキシサイクリンを処置によりがん遺伝子を消失させることで腫瘍を退縮させる(皮下におい腺菅構造を形成する正常な胆管上皮細胞に戻す)。その後、ドキシサイクリン投与を中断し、タモキシフェン処置によりELF3を活性化させる群と無処置の対照群に分けて腫瘍形成にELF3の活性化が及ぼす影響を解析する。また、これらのxenograftからtotal RNAを抽出し、ELF3の活性化により認められる細胞死のメカニズムを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった試薬の納品が遅れたため。今年度に購入する。
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