研究課題/領域番号 |
21K06809
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
柴沼 質子 昭和大学, 薬学部, 教授 (60245876)
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研究分担者 |
日暮 大渡 昭和大学, 薬学部, 助教 (50882487)
森 一憲 昭和大学, 薬学部, 講師 (60349040)
石川 文博 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 講師 (60515667)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ミトコンドリアストレス応答 / AMPK / 呼吸鎖 |
研究実績の概要 |
本課題は、近年ヒト腫瘍のかなりの割合を占めることがわかったミトコンドリアDNA/RNA/呼吸鎖活性低下(mt-Low)癌に対する個別化医療のために、有効な治療標的を同定することを目的としている。そのため、mt-Low癌細胞が呼吸鎖阻害剤(RI)に対して高度に感受性であることに着目し、呼吸鎖を標的とする戦略の実現へ向けた検討を行っている。3項目の計画を予定しているが、初年度から今年度は、「mt-Low癌細胞がRIに対して高度に感受性を示すメカニズム『呼吸鎖活性-代謝ストレス応答系(AMPK/NAD+/SIRT/PCG-1α)の共役機構の破綻』の実態について調べ、AMPKの活性化が細胞死の抑制に重要であること、逆に、mt-Low細胞がRIに対して高感受性であるのは、呼吸鎖阻害剤の存在下でATP↓/AMP↑が起こらない、もしくは起こってもそれに応答するはずのAMPKストレス応答系が起動しないことが原因であることを見出した。 以上より、RI処理下でのAMPK活性化の有無が細胞死誘導の鍵となることがわかったので、mt-Low細胞と正常細胞におけるAMPKの活性化状態について詳細を調べた。その結果、正常細胞ではRI処理により持続的にAMPKが活性化されるのに対して、mt-Low細胞ではAMPKが活性化されない、もしくは活性化されてもそれが持続しないことがわかった。また、ATP↓/AMP↑が起こっても十分にAMPKが活性化されないことがあることから、新たな可能性として、AMPK阻害タンパク質FLCNの関与が示唆された。 呼吸鎖複合体構成因子に対するsiRMAについて、RI同様の効果を示すものを探索する項目に関しては、複合体Ⅱ(SDHA:コハク酸デヒドロゲナーゼ)に対するsiRNAが有意に細胞死を誘導する可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、目的達成のために、以下の3項目(1)mt-Low癌細胞が呼吸鎖阻害剤(RI)に対して高度に感受性を示すメカニズム『呼吸鎖活性-代謝ストレス応答系の共役機構の破綻』の実態を明らかにする、(2)呼吸鎖複合体構成因子に対するsiRNAについて、RI同様の有効性を示すものを探索し、核酸医薬候補を得ると同時に、有効なsiRNAの標的機能から、最終的な細胞死の原因に関する情報を得る、(3)低濃度RIの個体に対する安全性、有効性を調べ、臨床応用の可能性を示す、を予定している。令和4年度までに項目(1)をほぼ終了し、(2)について候補を絞り込むことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、(1)について、残っている内容(AMPKの下流エフェクターの同定)、ならびに新たなな可能性として見出したAMPK阻害タンパク質FLCNの関与について検討する。(2)については、候補となったsiRNAによる細胞死の詳細(シグナルや様式)について調べ、結論を得る予定である。また、最終年度の令和6年度へ向けて、(3)の準備を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2,3月に使用した金額の一部が会計システムへの入力期限との関係で、未払いとなっており、次年度使用が生じた。システムの切り替えが済み次第、未払い分(消耗品;試薬類)の支払いに使用予定である。
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