研究課題/領域番号 |
21K06814
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
井手 聡一郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 副参事研究員 (30389118)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | うつ病 / 治療抵抗性うつ病 / ケタミン / 動物モデル / アルコール依存 / モデル動物 |
研究実績の概要 |
既存の抗うつ薬が奏功しない治療抵抗性うつ病の対策が希求されている。しかしながら、臨床病態を反映した有用なモデル動物が確立されておらず、うつ病の難治化やその治療メカニズムの解析は難航している。そこで本研究では、既存の抗うつ薬の“長期投与”が奏功せず、近年米国で治療抵抗性うつ病治療薬として承認されたケタミンの“単回投与”で抑うつ様症状が改善するという“臨床により近いモデル動物”を新規に作成し、治療抵抗性うつ病の発症と治療に関与する脳内の器質的・機能的変化を明らかにすることを目的とする。これまでに、アルコール長期曝露と慢性ストレスの組み合わせを、様々な期間・強度・タイミングを変更し負荷することにより、最適なモデルマウス作成条件を見出した。本モデルマウスでは、新奇環境摂食抑制試験において、抑うつの指標とされる新奇環境下での摂食開始時間遅延が見られ、既存の抗うつ薬フルオキセチン(SSRI)の5日間連続投与では改善が見られないが、ケタミン単回処置により改善することを明らかにした。また、スクロース嗜好性試験におけるアンヘドニアを指標とした検討においても、同様の傾向を確認した。さらに、内側前頭前野(mPFC)に焦点を絞った遺伝子発現解析の結果から、通常のうつ状態では変動が見られないが、治療抵抗性うつ病様状態の時のみにmRNA発現変動が見られ、ケタミン投与により行動変容が寛解した際には変動が見られなくなる特定の生体分子を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存の抗うつ薬の“長期投与”が奏功せず、近年米国で治療抵抗性うつ病治療薬として承認されたケタミンの“単回投与”で抑うつ様症状が改善するという“臨床により近いモデル動物”を作成し、さらに内側前頭前野(mPFC)に焦点を絞った遺伝子発現変動解析から、治療抵抗性うつ状態においてのみmRNAの発現変動が見られる生体分子を新たに見出しており、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で作成した新規アルコール依存併発治療抵抗性うつ病モデルマウスは、有用なモデル動物になることが期待される。このモデル動物におけるmPFCに焦点を絞った脳内分子発現変動を解析し、治療抵抗性うつ病の発症と治療において行動と相関して発現変動した生体分子を特定したため、当該分子の薬理学的操作による発症・治療モデルの再構築を行うことでメカニズムを明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症対策のため、一部研究打合せと学会発表がオンライン実施のはこびとなり、旅費を中心に次年度以降への繰り越しが生じた。一方、感染症拡大が収束することにより、これら経費は予定通りの支出になると考えられる。
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