本研究では、がんの進展過程におけるエネルギー代謝状態の変化が、がん形成にどのような意義を持つのかを明らかにすることをめざした。まず、PDHノックアウト乳がん細胞株を樹立したところ、この細胞は増殖が有意に抑制されていた。さらに、マウスにノックアウト細胞を移植したところ、腫瘍形成能が低下していた。この細胞にPDHを発現誘導できるベクターを導入して、レスキュー実験を行ったところ、腫瘍形成能が回復した。さらに、発現誘導のタイミングを変えたところ、移植後3週間経過してからPDHを誘導しても腫瘍形成能は回復した。これらの結果から、PDHを介したエネルギー代謝は、腫瘍形成後期で有効である可能性が示唆された。
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