研究課題/領域番号 |
21K06817
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
上田 真保子 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (60760353)
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研究分担者 |
宮沢 孝幸 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (80282705)
大保木 啓介 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医学研究センター, 副参事研究員 (80415108)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 乳がん / レトロエレメント / Gag遺伝子 / がん転移 / VLP |
研究実績の概要 |
我々は、乳がん試料を用いた遺伝子発現解析で、レトロトランスポゾン由来の遺伝子である「ARC」ならびに「PEG10」が高発現することを見出した。これらの遺伝子は、レトロウイルスの構造タンパク質をコードするGag遺伝子と相同で、RNAを運ぶ「ウイルス様粒子(VLP)」を形成して乳がんの転移に関わる可能性がある。本研究では、乳がん臨床試料から、Gag由来遺伝子が形成するVLPおよび内包するRNAを網羅的に同定し、乳がんの悪性化におけるVLPの役割を明らかにする。このような新しいがん悪性化機構の解明は新しい治療法の開発にも繋がると考える。 他グループによりPEG10がVLPを形成することが報告されたため(Segal et al, Science, 2021)、本年度はPEG10を優先的に解析した。具体的には、悪性化した乳がんで高発現するPEG10のアイソフォームの同定と、PEG10の標的分子を網羅的に同定するeCLIP-seq解析の条件検討を行った。eCLIP-seq解析では、解析にもちいる乳がん細胞の同定、抗体の選択、解析パイプラインの構築を行い、実際にテストランを実施した。 一方、我々は、Gagタンパク質をコードするレトロトランスポゾンを、ヒトゲノムで多数同定しており、PEG10やARC以外にも、VLPを形成する遺伝子が存在すると考えている。本研究では、新規のGag由来遺伝子を同定し、その標的分子の決定も目指している。本年度は、がん組織のデータベースTCGA (The Cancer Genome Atlas)の利用申請を行い、一般公開されていない2000近いサンプルの乳がん関連の発現データを入手した。現在、これらの発現データをがんのステージにわけて解析し、新規のGag由来遺伝の同定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、TCGAの発現データの配列解析、VLPタンパク質の確認、eCLIP-seqの実施という流れを計画していたが、最初にPEG10のeCLIP-seqを実施することになったため、解析の順番は変わってしまった。しかし、いずれ必要であり最も難しいeCLIP-seqの条件検討を早く始められたことは、本研究の全体計画としてはプラスになったと考えており、また研究計画としてはおおむね順調に進展していると思う。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、eCLIP-seq条件の改善を行い、乳がんにおけるPEG10の最終的なターゲット配列を急ぎ決定したいと考えている。PEG10は、ゲノムワイド関連研究(GWAS)でも乳がんとの関連が示唆されており、また、我々の解析においても、乳がんの原発巣で特に高発現することがわかっている。これらのことからPEG10と乳がんの関係を優先的に解析し、論文にまとめたい。本eCLIP-seqのライブラリ作成条件は、解析の質を決定する最も重要なステップであり、ARCを含めた他の新規配列にも応用するため、特に念入りに行う。 また今後行う解析に、TCGAの発現データをもちいた、VLPを形成可能な、新規のレトロポソン由来のGagタンパク質のリストを作成することがあるが、以下の四つの条件のいずれかを満たす配列をピックアップし、スコア順に優先順位をつける予定である。1)乳がんと正常組織間で有意に発現が異なる、2)乳がんのステージ間で有意に発現が異なる、3)発現量自体が多い、4)GagドメインのうちRNA結合ドメインが保存されている。もし条件に合う配列が見つからない、もしくはその後の解析でタンパクレベルの発現が認められない、VLPの形成がみとめられない場合は、TCGAのがん組織データ以外に、乳がん由来の細胞株の発現データの解析も実施する。細胞株であれば、リード数の多い発現データを取得できるため、より多くの候補配列を取得できると考える。いずれにせよ、新規配列のリストに優先順位をつけ、RNA結合ドメインをもっているのか、タンパク質として発現するのか、VLP構造をとるのかの確認実験を経て、条件をパスした配列のeCLIP-seqを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定を変更し、eCLIP-seqの解析を実施したことで高価な試薬が必要となったため予算の前倒し申請を行った。その後、別の手法をもちいれば、より安価な試薬でeCLIPを実施できることがわかったため、次年度使用額が発生した。
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