研究実績の概要 |
アストロタクチンは、ニューロン - アストログリア相互作用を媒介する脊椎動物特異的膜タンパク質であり、本タンパク質の障害がヒトの脳形成異常との関連が示唆されている。現在までに少数ではあるが、脳形成異常を呈する症例において両アレル性ASTN1バリアントが同定されており、本遺伝子の欠損が脳形成の異常をきたす可能性が示唆されている。そこで本年度の研究では、各種バリアントがASTN1の膜タンパク質の機能にどのような影響を及ぼすかを分子生物学的手法を用いて検証した。まず野生型と4種の病的変異型ASTN1タンパク質の発現ベクターを作成し、各タンパク質の細胞内局在の変化を検証した。その結果、野生型と変異型においてタンパク質の発現量や細胞局在において明らかな変化は認められなかった。 ヒトから神経細胞を採取することは困難であることから、容易に採取可能な尿由来細胞を用いたiPS細胞の樹立と神経細胞への分化誘導を行った。尿試料から上皮系細胞を分離装飾させ、RNAリプログラミング法を用いてリプログラミングを行いiPS細胞の樹立に成功した。すべてのコロニーにおいて、複数の多能性幹細胞マーカー(Nanog, SOX1, SOX2, Oct4, TRA-1-60, SSEA4)が陽性であったことから、良好なUDC由来のiPS細胞の樹立が確認された。 また、本研究で同定された病的バリアントが生体機能に及ぼす影響を評価するために、ゲノム編集技術(CRISPR/Cas9システム)を用いてAstn1ノックインマウスを作成した。Astn1ホモノックインマウスは生存能は、野生型あるいはヘテロノックインマウスと比較しても明確な差異は認められなかった。また、成長に関しても有意な差は認められなかった。今後は本モデルマウスを用いて詳細な解析を行っていく予定である。
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