研究課題/領域番号 |
21K06831
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高崎 真美 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 開発研究員 (80392009)
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研究分担者 |
林 洋平 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, チームリーダー (90780130)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 22q11.2欠失症候群 / 疾患特異的iPS細胞 / 神経堤細胞 |
研究実績の概要 |
これまで、Coriell Institute由来22q11.2欠失症候群患者線維芽細胞(GM05876、GM13325)より所属研究室にて樹立したiPS細胞株と、理研バンクより購入した22q11.2欠失症候群患者由来iPS細胞株(HPS1627、HPS2296)について独自に特性解析を行い、研究に資する品質の高い疾患由来iPS細胞株を準備してきた(Stem Cell Res. 2022, 61: 102744に発表)。 これらのうち、まず健常人由来iPS細胞株(WTc11)を用い神経堤細胞への分化誘導法の検討を行なった。誘導方法として、これまで報告のあるTGF-b阻害剤+GSK-3阻害剤添加条件と、研究代表者が独自に開発したTGF-b阻害剤+化合物X添加条件について比較した。フローサイトメトリーにて神経堤マーカーp75陽性細胞を解析したところ、GSK-3阻害剤添加条件よりも化合物X添加条件でのp75陽性細胞率が高く、陽性率は化合物X濃度依存的に上昇した。qPCRによる遺伝子発現解析でも、化合物X添加サンプルでの神経堤細胞マーカーTFAP2、SOX10の発現が既存条件と比較して同等レベル以上に上昇した。これに対し神経外胚葉マーカーPAX6の発現は、既存条件と比較して化合物X添加サンプルで強く抑制された。免疫染色によるタンパク質レベルの解析でも、化合物X添加サンプルにおいてPAX6陽性細胞はほとんど確認されなかったことから、この分化条件は神経堤細胞を高効率に誘導する優れた系であることが示された。 現在、化合物X添加条件にて疾患由来iPS細胞株での分化実験を行なっており、これまでに疾患株間での神経堤細胞への分化効率の違いを検出している。今後は、疾患iPS細胞株間での神経堤への分化効率の違いが何に起因するかを、網羅的遺伝子発現解析等の比較によって明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
独自に開発したiPS細胞の神経堤細胞への誘導条件や、分化した神経堤細胞の定量化条件の最適化に時間かかったため、当初予定していた全トランスクリプトーム解析などの開始に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
神経堤細胞を高効率に誘導できる新規の系が確立できたので、22q11.2欠失症候群患者由来iPS細胞株(HPS1627、HPS2296、HiPS-GM05876、HiPS-GM13325)と健常者由来iPS細胞株を用い、神経堤細胞へ分化誘導実験を行う。 神経堤細胞特的表面抗原p75を指標に、神経堤細胞への分化効率に有意な差が見られた疾患由来iPS細胞株は、誘導初期に働く遺伝子の発現異常に原因があると考えられる。この特徴を示した株の網羅的遺伝子発現解析を行い、健常人由来サンプルと有意に発現量の異なる遺伝子を同定する。候補因子が絞られた後は、健常人由来iPS細胞でのノックダウン実験や疾患由来iPS細胞での強制発現実験等を行い、神経堤細胞分化を検証する。 神経堤細胞への分化効率に差が見られない疾患由来iPS細胞株は、分化した神経堤細胞自身の遊走能低下またはその後の分化能(末梢神経、骨、軟骨など)に異常がある可能性がある。この検証のため、分化誘導した神経堤細胞をp75を指標にフローサイトメトリーにて分取し、増幅後に神経堤細胞の遊走能を評価する。分化能に関しては、末梢神経、骨、軟骨への分化実験を行い、健常人由来iPS細胞と比較する。
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