研究実績の概要 |
2022年度の実験結果からNKAPがRNA輸送を制御している可能性が示唆されたため、NKAP欠乏が核内RNAと細胞質RNAプロファイルにどのような影響を与えるか,RNAシーケンシングを用いて検討した。タンパク質分解除去システムを応用したNKAP-AID細胞を用いて、RNAシーケンシングを核内RNA/細胞質RNA別個に実施し、トランスクリプトームプロファイル相関を調べた。NKAP欠乏有り・無しで比較したところ、核内遺伝子発現パターンと細胞質遺伝子発現パターンに関連を認めず、NKAPのmRNA核外輸送制御に関与している可能性が示唆された。 NKAP結合因子がどのようにNKAPと協調して核スペックル機能を制御しているかを明らかにするため、NKAP結合因子のAID細胞の作成を試みた。SRRM2-AID細胞、SON-AID細胞の作成を試みたが、細胞内の2コピーのSRRM2遺伝子・SON遺伝子にAIDタグ付けされた細胞を得ることは出来なかった。AIDタグの付与によってもSRRM2・SONタンパク機能に影響を及ぼし、核スペックル機能異常を引き起こし細胞死につながる可能性が示唆された。 本研究から、NKAPの新たなRNA代謝制御因子としての役割・核スペックルの構造タンパクとしての役割を明らかにした。NKAPがSON/SRRM2といった核スペックル構成蛋白の細胞内局在を制御し、協調して核スペックル機能制御を行っていることが明らかになった。NKAPのみならず、NKAP結合タンパクであるSRRM2遺伝子変異も精神運動発達遅滞を引き起こすことを明らかにした。SON遺伝子変異も精神運動発達遅滞を合併するZTTK症候群として知られている。そのため、NKAP・SON・SRRM2の遺伝子変異により同様の分子機構により精神運動発達を発症する可能性が示唆された。
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