研究課題/領域番号 |
21K06836
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
匂坂 敏朗 神戸大学, 医学研究科, 教授 (80359843)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小胞体 / 小胞体流動 / Lunapark / ERファジー |
研究実績の概要 |
小胞体は、細胞内に網目状に張り巡らせたチューブ構造と核膜周辺にあるシート構造からなる。この二つの構造は静的なものではなく、流動的であり、チューブ 構造からシート構造、その逆のシート構造からチューブ構造に速やかに変化することが知られている。その異常が神経変性疾患の発症に関わるとされているが、 その因果関係は十分明らかになっていない。したがって、小胞体流動の解明は生命現象の根幹に迫るきわめて重要な課題である。本研究では、小胞体流動の分子実態は、チューブ構造、シート構造、それぞれに関わるタンパク質の小胞体膜への挿入と解離による小胞体の構造制御タンパク質のホメオスタシスと捉え、それぞれの膜挿入装置と膜解離因子の単離、同定を行う。同定したタンパク質と人工膜を用いた試験管内再構成系を用いて小胞体流動を再現すると共に、その異常である神経変性疾患の発症との機能関係を明らかにし、小胞体流動の革新的な概念を提示する。Lunaparkは小胞体のthree-way junctionに局在する膜タンパク質であり、私どもはlunaparkのユビキチンリガーゼ活性が小胞体の形態形成に必須の役割をしていることを明らかにしている。したがってlunaparkによるユビキチン化反応が膜解離の開始因子となり、小胞体流動を調節している可能性が考えられる。そこで 本年度はlunapark とlunaparkがユビキチン化する小胞体膜タンパク質p63の性状解析を行い、以下の結果を得た。 1)小胞体膜タンパク質p63のlunapark結合領域を見出した。 2)p63のlunapark結合領域がその細胞内局在に関わることを見出した。 p63は小胞体の選択的オートファジーであるERファジーを制御することから、lunaparkが膜解離開始因子として、ERファジーの調節因子p63と連携して小胞体流動を調節していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、lunapark とERファジーの調節因子として知られるp63が直接結合すること、その結合がp63の細胞内局在に関わることを見出した。本年度の知見はlunaparkが膜解離開始因子として、ERファジーの調節因子p63と連携して小胞体流動を調節していることを示唆している。Lunaparkが局在するthree-way junctionはERファジーを調節することで、小胞体流動を制御する場として機能している可能性がある。Lunaparkとp63の機能連関を明らかにすることで、小胞体流動における全く新しいERファジーの役割の解明に繋がる可能性があり、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
小胞体チューブを構成する分子、その複合体および膜ドメインの構造をX線結晶構造解析法、電子顕微鏡構造解析法、クライオ電子線断層法により解析し、小胞体チューブの構造と機能を明らかにすることを目的とする。小胞体の構造制御タンパク質、膜挿入タンパク質複合体、膜解離タンパク質複合体に関して、動物細胞・昆虫細胞・大腸菌などを使い大量発現させ、必要ならばリフォールディングを行い、精製する系を確立する。これら精製タンパク質をX線結晶構造解析法、電子顕微鏡構造解析法により、構造決定をする。小胞体の構造制御タンパク質を配位させた人工リポソームを氷包埋し、集団としての効果、膜構造を、クライオ電子顕微鏡を用いて調べる。その膜構造に、小胞体の構造制御タンパク質の構造をfittingする。また、小胞体の構造制御タンパク質の膜貫通領域構造の詳細を電子顕微鏡と計算機シミュレーションを組み合わせて解析し、小胞体の構造制御タンパク質の膜とのインターフェースを決定すると共に小胞体流動形成モデルを作成する。
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備考 |
神戸大学医学研究科膜動態学ホームページ http://www.med.kobe-u.ac.jp/membrd/
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