研究課題
生命現象を支える細胞の運動、接着、形態形成等の細胞機能では、アクチン細胞骨格がダイナミックに制御されている。これまで、研究代表者は、マルチドメイン蛋白質である Junctional Rab13-binding protein (JRAB)の1分子構造ダイナミクスがアクチン細胞骨格の時空間制御に関わることを明らかにしてきた。しかし、各ドメインの機能活性がJRABの構造変化によってどのように調節され、構造特異的な細胞機能を発現するのかについての統合的な理解には至っていない。最近、蛋白質の構造において安定的な構造を形成しないdisorder領域の機能が注目を集めている。JRABもN末端とC末端に挟まれた広範囲にdisorder領域を有しており、その構造特異的な機能発現への関与が予想される。そこで、本研究では、JRABの構造ダイナミクスの統合的理解とJRABのdisorder領域の新規役割といった観点から、アクチン細胞骨格の多面的制御機構の解明を目指した。Disorder領域を有する蛋白質の多くは液ー液相分離によって液滴を形成することが知られる。これまでに研究代表者は、JRABがdisorder領域に起因する液―液相分離によって液滴を形成し、細胞内分子輸送に関わるリサイクリングエンドソームの膜変形を誘導し、その機能を調節することを明らかにしている。本研究では、細胞生物学的解析、生化学的解析に加えて電子顕微鏡、高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)、全反射照射蛍光顕微鏡(TIRF)-AFMを用いた解析を組み合わせたアプローチでアクチン細胞骨格制御機構においてもJRAB液滴が重要な役割を担っていることを示唆する研究成果が得られた。令和5年度は、JRAB液滴がアクチン線維束形成において促進的に働くことを明らかにし、さらに、JRAB液滴をハブとしてJRABとRab13、actinin-1/-4やfilaminといったJRAB結合蛋白質群が協調し、アクチン線維束の質的変化を時空間的制御している可能性を提示することができた。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
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