研究課題
眼球正面に位置する黒目の表面にある「角膜」は、外界から眼球内部を保護しつつ、光を通すレンズの役割を果たす重要な視覚器官である。そのため、角膜に関わる疾患には健康な生活に支障を来たすものもあり、特に角膜変性疾患の中でも「フックス角膜内皮変性症(FECD)」は発症機序が未解明であるため、角膜移植のみが有効な治療法となっている。海外の先行研究より、FECD患者には有病率の差などから遺伝的な発症リスクに起因する人種差が有ると考えられるため、真の病因の解明を困難にし、代替治療法の確立を阻んでいる。研究代表者らは、過去にDNAアレイを用いた日本人FECD症例のゲノム解析により、既報の人種差を裏付けつつも新たな疾患関連候補ゲノム領域を選定した。本研究は、それらの知見を基に、FECD発症の背景にある遺伝学的人種差と分子生物学的機序解明へのマルチオミクス研究基盤の構築を目的とする。最終年度は、引き続き本学眼科と共同で進めて来た各種症例情報の見直しを通じてFECD症例の確保を進めた。日本人では稀なFECD症例の研究促進のために様々な検討を重ねた末、詳細なゲノム領域の解析を優先させることが得策と結論付け、次世代シーケンサー(NGS)による遺伝子領域の塩基配列を集中的に読み解くエキソーム解析を実施した。その結果、罹患者のゲノム情報基盤となる日本人FECD 56 症例のエキソームデータの取得に成功し、現在研究代表者らが選定した疾患関連候補ゲノム領域での解析を進めている。また他の情報基盤構築の要素として、研究代表者らがNGSで取得した角膜内皮のトランスクリプトームデータを用いて、白人FECD患者の角膜内皮細胞特異的な網羅的遺伝子発現プロファイルの構築に成功し、論文による公表に至った。以上の成果により、FECDの病因解明に必要な情報基盤の構築に関しては、目標を達成できたと考えられる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件)
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