研究課題
アルツハイマー病は、記憶や思考能力が徐々に失われ、最終的に日常的な行動にも支障を来たす病気であり、現在においても、アルツハイマー病の発症メカニズムの詳細は明らかにされておらず、有効な治療戦略は確立されていない。私たちは以前、アルツハイマー病モデルマウスを用いて、ミトコンドリア機能の低下により、毒性の高いAβオリゴマーが蓄積し、アルツハイマー病態が悪化することを明らかにしました(Commun Biol 2021)。今回、ミトコンドリアを活性化するMITOLに着目し、MITOLを活性化する薬剤をスクリーニングできるアッセイ系の樹立し、このアッセイ系を用いてMITOLを活性化する薬剤をスクリーニングしたところ、複数の薬剤を同定することができた。そこで、異常タウを発現したアルツハイマー病のモデル細胞に投与したところ、異常タウの凝集を劇的に抑制することを見出した。今後、アルツハイマー病モデルマウスを用いて、認知症の改善の有無を解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
ミトコンドリアを活性化するMITOLに着目し、MITOLを活性化する薬剤をスクリーニングできるアッセイ系の樹立に成功した。また、この薬剤をスクリーニングしたところ、複数の薬剤の同定することに成功した。さらに、まだ予備的な実験結果ではあるが、異常タウを発現したアルツハイマー病のモデル細胞に投与したところ、異常タウの凝集を劇的に抑制することを見出した。興味深いことに、この薬剤の作用機序は、ミトコンドリアホルミシスを介してミトコンドリアを活性化していることがわかった。今後、アルツハイマー病の治療薬開発が期待できる。
今回樹立した薬剤スクリーニング系を用いて、新たな薬剤の同定を試みる。すでに同定した薬剤については異常タウを発現したアルツハイマー病のモデル細胞を用いてミトコンドリアへの活性評価を行う。有望な薬剤についてはアルツハイマー病モデルマウスを用いて、行動解析により認知症の改善の有無を解析する。また、これらの薬剤の標的タンパク質の同定を試みる。このために、化学合成の専門家と共同研究を進めながら、創薬開発を進める。
当初予定していた人件費・謝金及び旅費を使用しなかったこと、物品費の使用予定より少なかったため次年度使用額が生じた。次年度は主に物品費として試薬などの消耗品に使用する計画をしている。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
iScience
巻: 25 ページ: 104582~104582
10.1016/j.isci.2022.104582
The Journal of Biochemistry
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10.1093/jb/mvab153