研究課題/領域番号 |
21K06845
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
加部 泰明 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (20397037)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 癌 / 肥満 / 脂質代謝 / ヘム / ケミカルバイオロジー |
研究実績の概要 |
本研究では、これまでに新規のガス応答性因子として同定した膜タンパク質PGRMC1の構造的機能制御の解明を行った。X線結晶構造解析により、PGRMC1はチロシ ン残基のヘム配位によって、突出したヘム同士が重なり合った特異な重合体構造を形成することを見出し、生体内ガスCOがこの重合が解離してPGRMC1の機能を阻 害することを見出した。PGRMC1はがん細胞内のヘム濃度に応答して重合化することにより活性化し、がん増殖に関わるEGFRや薬物代謝酵素シトクロームP450 (CYP3A4)などと会合してがん増殖シグナルを増強し薬剤耐性を亢進するという、ダイナミックな構造変換によって機能することを明らかとしている(Nature Commun 2017、Pharmocol Res 2018)。これらの知見は、PGRMC1を標的とした新たな抗癌治療薬の創出に繋がる可能性が考えられ、PGRMC1を指標としたケミカルスクリーニングを進め、いくつかの天然由来の有機化合物がPGRMC1のヘムダイマー構造を特異的に認識して結合することを見出している。 今年度の成果としては、これらのPGRMC1を標的と した候補化合物のスクリーニングにより、天然由来の有機化合物グリチルリチン誘導体が、細胞レベルおよびマウス癌移植モデルにおいて強力に抗腫瘍活性を示す化合物を見出すことに成功した(Cancers, 2021)。さらに、PGRMC1の脂質代謝制御機能を解明し、PGRMC1による脂肪細胞の脂肪蓄積亢進作用を、これら候補化合物が抑制して抗肥満増進効果を示すこと見出している。これらの成果を基盤として、PGRMC1標的とした抗癌治療薬や肥満抑制効果を有する薬剤の開発を目指して行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌増殖作用、肥満増強作用を示す膜タンパク質PGRMC1の機能を抑制する新たな低分子化合物の選定に成功してこれを基盤とした機能解析を進めており、研究は順調に進展している
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今後の研究の推進方策 |
PGRMC1を標的とした薬剤の誘導体の解析を進めることにより、さらに強い効果を有する化合物の選定を行い、新たな創薬開発の基盤としたい
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、PGRMC1に作用する薬剤の選定のための予算を計上していたが、既に有していた化合物ライブリーを用いて、PGRMC1に対する薬剤スクリーニングによっていくつかの候補化合物を得ている。そこで、これら候補化合物の誘導体化や、細胞レベル、マウス個体レベルにおける機能解析の費用を次年度に繰り越して計上することとした。
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