研究課題
有機リン代謝に関与する神経障害標的エステラーゼ(Neuropathy Target Esterase:NTE)をコードするヒトPNPLA6(Patatin-like phospholipase domain containing 6)cDNAを導入したマウス(TGマウス)、またヒト神経性疾患で検出された変異領域に対応する部分変異を持つマウスpnpla6遺伝子変異マウス(KOマウス系統)を用い、今年度も遺伝学的、組織学的、分子生物学的解析を継続した。 NTEは細菌を含めた多くの生物種に共通して存在し、農薬や殺虫剤に含まれる有機リンが活性中心に共有結合した結果、ヒトではシックハウス症候群に類似した有機リン誘発性遅延性神経障害を生じるとされている。今年度もKOマウス系統の復元とバッククロス等を進め、調べたすべてのホモ型KOマウスは着床後まもなく死亡することやヘテロKOマウスでは発現が約1/2に低下する系統を見出した。一方、今後の研究展開のためにヘテロKOマウス4系統より総計23例の胎仔由来繊維芽細胞取得に成功し、またヒトPNPLA6 cDNAを導入したHEK293細胞を樹立した。後者を用いた実験からは、有機リン(DDVP)とNTEの複合体が細胞増殖に阻害的効果を示すことを推測する結果が得られ、短報の論文にまとめることができた。生後2ヶ月程度TGマウスとヘテロKOマウスでは主だった行動解析上の変化が再現できていないため、今後はバッククロスの進んだ比較高齢(6ヶ月)のTGマウスとヘテロKOマウスを用いた行動解析を展開するとともに、上記胎仔由来線維芽細胞等をいて、農薬にも含有の有機リンの一種ジクロスボス(DDVP)存在下での細胞増殖への影響等の検討を行いたい。
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臨床環境医学
巻: 32 ページ: 77-84
巻: 32 ページ: 18-27