・過酸化脂質の無毒化に働くグルタチオンペルオキシダーゼ-4(GPX4)は、遊離鉄イオン依存性に生成する過酸化脂質が引金となって起こる細胞死・フェロトーシスを抑制している。培地中のシステインの欠乏はグルタチオン含有量の減少を招き、GPX4活性が低下してフェロトーシスを誘導するが、同時にメチオニンを欠乏させると細胞死はむしろ抑えられた。これはメチオニン欠損ではS-アデノシルメチオニン(SAM)の減少によりシトシンメチル化能の低下が原因で細胞周期の進行が停止し、それに伴う活性酸素の生成が減少する結果、フェロトーシスの原因となる過酸化脂質の生成が減少したことによると考えられる。 ・グルタチオンの分解過程で生成するCys-Glyジペプチドの分解に働くジペプチダーゼとしてCNDP2を同定し、ゲノム編集により遺伝子欠損マウスを作製した。本マウスは通常飼育条件では異常を認めないが、アセトアミノフェンの過剰投与による肝・腎障害モデルでは、野生型マウスに比べて特に腎障害が悪化することが分った。 ・これまでin situでフェロトーシス細胞を特定することは困難なことから、検出抗体を作出して報告していた。今回本抗体を用いたFACS解析により、フェロトーシスを起こした生細胞でも識別可能なことが分かった。 ・ビタミンCを合成できないAkr1a欠損マウスはアセトアミノフェンによる肝障害を強く受ける。本マウスと野生型マウスにおけるアセトアミノフェンの代謝についてLC-MSを用いて比較検討したところ、Akr1a欠損マウスではグルタチオン類似化合物のオフタルミン酸の合成能が低下していたことから、蓄積したグルタミン酸による毒性がフェロトーシスを促進して肝障害を悪化させたと考えられる。
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